IT企業が積極的に取り組む「リゾートワーク」|概要・導入事例・自治体サポートなど

オフィスへ出社せずに仕事をする「リモートワーク」が昨今のコロナ禍で急激に増加しました。通勤のストレス無く仕事ができるので、集中して業務を進められると、なかなか評判のようです。
そのような中、現在IT企業などでは「リゾートワーク」という働き方に注目し、積極的に取り組んでいるようです。リモートワークの一歩先をゆくリゾートワークとは、一体どのような働き方なのでしょうか?導入事例を交えながら詳細をご紹介します。

IT企業だけじゃない、「リゾートワーク」積極導入企業や、フリーランサーも利用可の自治体の取り組みをご紹介!

リゾートワークとは

リゾートワークとは、その名の通り「リゾート地で働くこと」を指す言葉です。リゾート地サテライトオフィスやコワーキングスペース等で仕事をします。わざわざオフィスに通勤しなくても仕事ができるシステムはすでに構築されていますから、自由な場所で働くことは可能です。

この制度を導入している企業は、福利厚生の一環として行っています。ただ、リラックスしながら仕事をするだけでなく、社員教育の一面もあり、リゾート地の自治体と提携して様々なイベントを行うこともあります。

リゾートワーク導入企業一覧

企業がリゾートワークを行うメリットは数多く挙げられます。社員の成長を促す意味もありますが、都心部にオフィスを持つ企業の場合、社員の働く場所を分散させることで、全社員が働く広さのオフィスを用意する必要がなくなります。その結果、都心部は広いオフィスを縮小することが可能になり、コストダウンとなります。

また、働く環境が良い場合、社員の働くモチベーションのアップにも繋がるため、業績アップや離職率の低下も期待できます。そのようなメリットが期待できるリゾートワーク制度を実際に取り入れた企業の導入例をご紹介します。

株式会社ヌーラボ

株式会社ヌーラボは福岡県福岡市のあるIT企業です。北海道東川町と沖縄県の宮古島でリゾートワークを行っています。リゾートワークを希望する社員を社内で公募し、選ばれた社員と家族の旅費の一部を、企業が負担することになります。

宮古島では宮古島市教育委員会と提携しており、滞在している社員は小学校、中学校、高校でそれぞれの特技を活かした授業を行います。宮古島のキャリア教育として、社員のスキルを役立てることができます。

株式会社セールスフォース・ドットコム

アメリカ・サンフランシスコの本社がある株式会社セールスフォース・ドットコムの日本法人では、和歌山県白浜町にサテライトオフィスを開所しました。羽田空港から南紀白浜空港まで75分、空港から10分のところにオフィスがあり、都内とのアクセスが良い場所にあります。

白浜町のサテライトオフィスでも、通常と同じ業務を行い、顧客との商談はオンラインで行います。

また、白浜町の人材育成の一環として、子ども向けの「プログラミング教室」をしながら、地方に不足しているIT人材を育てています。

日本航空株式会社

日本航空株式会社では2017年から「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた「ワーケーション」という名称のリゾートワークを開始しました。

リゾートワークを実施している企業では珍しく海外のリゾート地も対象であり、最大5日間の社外勤務が認められています。また有給休暇ではなく、通常の業務という扱いになります。さらにパイロットや客室乗務員だけではなく、全社員を対象に実施しています。

なお、リゾート地は海内だけでなく、和歌山県白浜町、鹿児島県徳之島町、軽井沢、沖縄など国内リゾート地でも利用可能です。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社では「地域 de WAA」という名称でリゾートワークを行っています。北海道下川町、宮城県女川町、山形県酒田市、静岡県掛川市、山口県長門市、宮崎県新富町の6つの自治体と提携しています。

コワーキングスペースは無料で利用できます。自治体が抱える地域課題解決に関わる活動に参加することで、提携施設の宿泊費が無料、または割引されるシステムとなっています。

株式会社野村総合研究所

株式会社野村総合研究所のリゾートワークは、2017年から徳島県三好市で始まりました。「三好キャンプ」と呼ばれており、古民家をサテライトオフィス兼宿泊所とし、平日は仕事を、週末は休暇を取るスタイルです。1ヶ月間の滞在を年に3回行っています。

地元の学校ではロボットやVRなどの特別授業を開催、また、自治体職員向けにIT講座などを開催し、人材育成や交流を行っています。

自治体がリゾートワークを後押ししているところも

現在の日本は、大都市に多くの機能が集中しており、それに伴って人も大都市へと集中する「一極集中型」となっています。都市部は過密、地方は過疎と双方にとって弊害が出ている状態です。

この状況を改善するために、地方の自治体は積極的にリゾートワークを後押ししています。自治体に何かしらのボランティアなどを行う代わりに、サテライトオフィスや宿泊所を提供する場合も多くみられます。

それぞれの自治体は、実際どのように誘致をしているのでしょうか?

鳥取県「ワーケーション実施企業支援事業費補助金」

鳥取県では、県外の民間企業や団体を対象に「ワーケーション実施企業支援事業費補助金」で支援をしています。国立公園である鳥取砂丘で仕事をすることもできます。

鳥取県に滞在し、県内の企業や団体との交流や、ボランティア活動など、地域貢献活動を実施することを条件に、社員の家族までの補助金が出ます。

補助の上限額は75,000円で、一人あたり一泊5,000、補助率は2分の1となります。

岩手県「新型コロナウイルス感染症対策等整備事業」

岩手県は「新型コロナウイルス感染症対策等整備事業」として、リゾートワークを受け入れる事業者に対し、助成事業を実施しています。インターネット環境の整備や、コワーキングスペースの改装など、補助対象経費3分の2以内までの金額が対象であり、上限額は200万円です。

長野県「リゾートテレワーク整備事業」

長野県では「信州リゾートテレワーク」という名称で、リゾートテレワーク整備事業を行っています。信濃町、飯綱町、白馬村、千曲町、山ノ内町、軽井沢町、佐久市、木曽町、諏訪市、茅野町、駒ヶ根市、富士見町など40を超える多くの拠点で実施しています。

支援対象となる条件は「県内への3連泊以上の滞在」「宿泊代金が1泊1人あたり1万円以上」です。他の自治体では法人の募集が目立ちましたが、長野県では開業届を出していないフリーランサーでも申し込みが可能です。

福島県「ふくしまテレワーク×くらし 体験支援補助金」

福島県も「ふくしまテレワーク✖️くらし体験支援補助金」を行っています。対象になるのは、福島県外の企業、企業に属している人、フリーランスです。

1〜3ヶ月間滞在する「ふくしまじっくり体験コース」の長期コースと、5泊6日までの「ふくしまちょこっと体験コース」の短期コースの2種類が用意されています。

宿泊費、居住賃料、交通費、コワーキングスペースの施設利用料、レンタカー代、引っ越し費用などが、一定の条件を満たせば、長期コースが対象経費の4分の3、短期コースは10分の9補助されます。

宮城県「サテライトオフィス設置推進補助金」

宮城県も「サテライトオフィス設置推進補助金」として補助を行っていますが、他県の比べると対象となる法人や業種などの条件が細かく定められています。

企業に関連するオフィスや工場などが東北6県内に無く、かつ主な業種が製造業、情報通信業、運輸業、卸売業、専門サービス業のいずれかに該当する企業であること。また、東北6県内にキャンパスがない大学となっています。

仕事場、住居の賃料の補助割合は、市町村によって割合が異なります。

新潟県「新潟市移住促進特別支援金交付事業」

新潟県は「新潟市移住促進特別支援金交付事業」を行っています。新潟市に移住する前に、東京、神奈川、千葉、埼玉に1年以上住んでいた人が対象です。

これらの場所から新潟へ就業時間、起業のために移住をした人で条件うをみたいしている場合、1世帯あたり30万円が支給されます。

島根県「しまねUIターンテレワーク支援事業」

島根県の「しまねUIターンテレワーク支援事業」は、県外の企業に所属する人や個人事業主のテレワークを行う人が対象です。

それぞれの必要経費には上限がありますが、インターネット回線を整備する費用や、コワーキングスペースなどの施設使用料、出張交通費などが対象であり、これらの2分の1を補助してもらえます。

リゾートワークはメリットが多い!

リゾートワークは企業にも自治体にもメリットがありますが、何より働く人そのものへのメリットが大きいといえます。

地方のリゾートで仕事をするメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

短時間で集中できる

せっかくリゾート地にいるのだから、仕事終わりに観光をしよう!という気持ちになり、短時間でも集中して仕事に取り組めるようになったという声があります。

オフィスに出勤する場合、通勤時間がどうしても必要でしたが、その通勤時間分も仕事に当てることができるので、残業をする時間も減少します。

働き方改革に着手できる

厚生労働省が推進する「働き方改革」は、働く人達の事情に合わせて柔軟に働き方を選べるようにするというものです。リゾートワークを導入すれば、働く環境も良くなり社員の満足度も向上しますし、離職率も減少にも期待できます。

働き方改革に着手できるだけでなく、業績の向上にも繋がります。

プライベートとのバランスが取りやすい

仕事を中心にする生活から、仕事とプライベートの両方を重視したいという考えの人が増加しています。毎日同じところを行き来する生活では、充実感を得ることは難しいものでもあります。

リゾート地で仕事をすれば、仕事終わりに観光をしたり、レジャーをしたりと、プライベートとのバランスを取りやすくなります。

まとめ

リゾートワークはただリラックスできる場所で仕事ができるというだけでなく、リゾート地となる自治体にもメリットが大きなものになります。都市部で働く人のノウハウを、リゾート地の子ども達に教えたり、自治体職員と共有したりすることで、人材育成に繋げることができるのです。

企業にも自治体にもメリットがあるリゾートワークですが、昨今のコロナ禍で一時的に受け入れを停止している自治体もありますので、その都度詳細をご確認することをオススメします。