【企業向け】リモートワーク導入における法律問題とは?対策も解説

リモートワークは、企業側にとっても従業員側にとっても魅力的な働き方です。しかし、テレワークに慣れていない場合、法律の面で苦労もあります。今回の記事では、在宅ワークを導入する経営者に向けて、リモートワーク(テレワーク)の法律問題を解説します。法律に関しては苦手意識を持つ人も多いと思いますが、知っておかないと後々トラブルになる可能性もゼロではありません。ここでは基本的な情報をわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。

リモートワークには雇用型と自営型の2種類ある

リモートワークには雇用型と自営型の2種類ある

リモートワーク(テレワーク)には、基本的に雇用型と自営型の2種類あります。どちらの種類かによって企業側の責任も変わるため、従業員側との立ち位置なども含めて理解しておきましょう。

 

雇用型

雇用型のリモートワーク(テレワーク)は、企業に属する形の在宅ワークを指します。企業が従業員を採用し、その従業員に遠隔で作業してもらうのが雇用型です。雇用型の場合、自宅で行う在宅ワークの他、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務もあります。基本的に雇用型は、一般的な従業員と同等の扱いになるのが特徴です。

 

自営型

自営型のリモートワーク(テレワーク)は、企業に属さない形の在宅ワークを指します。本人が独立して仕事を獲得するのが自営型です。自営型の場合、自ら営業活動して取引先を決定し、成果物に対して報酬を得るのが通例です。基本的に自営型は、フリーランスなどの個人事業主・自営業と同様の扱いとなります。

雇用型リモートワークの場合は労働法が適用される

雇用型リモートワークの場合は労働法が適用される

雇用型リモートワークの場合、労働法が適用されます。ただし、労働法という名前の単一の法律は存在しません。あくまでも、労働基準法や労働組合法、最低賃金法などの総称として使用されています。例えば、在宅勤務に適用される労働法制には以下があります。

  • 労働基準法(労働時間、年次有給休暇、割増賃金[時間外労働・深夜手当]など)
  • 労働契約法(労働契約の内容の変更など)
  • 最低賃金法(最低賃金など)       
  • 労働安全衛生法(健康診断など)
  • 労働者災害補償保険法(労災保険の給付など)

以上の法律は、仮に在宅勤務でも適用される労働法制となります。これらの法律を正しく理解せずにリモートワーク(テレワーク)すると、後々トラブルにも発展してしまいかねません。ポイントを押さえておきましょう。

雇用型リモートワークを導入する場合の注意点4つ

雇用型リモートワークを導入する場合の注意点4つ

ここからは、雇用型リモートワークを導入する場合の注意点を解説します。

 

1.就業規則の見直し・変更

まずは、就業規則の見直し・変更を進めましょう。リモートワーク(テレワーク)に関しては、就業規則に明記していないところもあります。特に、新たに在宅ワークを導入した場合、就業規則が古いままになっていることもあるでしょう。古い就業規則のままでは、トラブルを招く恐れもあるため、早めの見直し・変更が必要です。またリモートワーク(テレワーク)の導入で、労働時間や賃金制度が変わる場合も、新たに就業規則を定めなければなりません。

ちなみに、リモートワーク(テレワーク)に関する就業規則は、本来の就業規則をそのまま変えても問題ありません。もしくは就業規則とは別に新たに在宅ワーク用の規定を設定してもOKです。

ただし、後者の場合も労働基準法上は就業規則の一部として扱われるため、意見聴取・労基署への届出・従業員への周知の手続きが必要です。従業員が10人未満で就業規則の作成義務がない場合でも、労働条件通知書などで個別に通知しなければなりません。

 

2.労働時間の把握

リモートワーク(テレワーク)では、労働時間の把握が必須です。オフィス勤務なら従業員の仕事を目視できますが、在宅勤務は把握しきれません。なかでも曖昧になりやすいのが、始業時間や就業時間です。

企業は、そういった従業員の出退勤を常に記録しなければなりません。みなし労働・みなし残業も同様です。ここを明確にしないと、仕事とプライベートの境界線が曖昧となり、労働時間の算定が難しくなってしまいます。

場合によっては、怠ける従業員もいるかもしれません。電話・メール・チャットでの日々の報告、在籍・離席状況の確認などを徹底しましょう。

 

3.評価制度の改正

リモートワーク(テレワーク)の場合、従業員は「正当に評価されていない」と感じやすい傾向にあります。確かに、オフィス勤務の場合は人事評価も受けやすいです。自分の仕事が周囲から見えるため、仕事の成果も主張しやすいでしょう。しかし、在宅ワークは作業している姿が目に見えません。その結果、不当な評価だと従業員が不満を持つケースも。

そのため評価制度の改正も必要です。自宅で働いている人も公平に評価する仕組みがないと、従業員の反発は逃れられません。なかには自身への評価が不当と感じ、モチベーションを失う従業員もいます。企業側は目に見える形でリモートワーク(テレワーク)を評価するよう、評価制度の策定を進めなければなりません。

 

4安全衛生教育の実施

厚生労働省では、リモートワーク(テレワーク)に従事する従業員に対して、安全衛生を確保するためのチェックリストを用意しています。このチェックリストには、在宅ワークを導入する際に把握しておきたい重要な事項がまとめられています。

「法定事項」に「◎」が記載されているものは、労働安全衛生関係法令上、事業者に実施が義務付けられている事項です。これが不十分であると諸々の問題が発生するので、安全衛生教育の実施も兼ねて、あらかじめ対応しておきましょう。

リモートワークを成功させるためのポイント

最後に、リモートワーク(テレワーク)を成功させるためのポイントを解説します。

 

適切なITツールの導入

在宅ワークに必要不可欠なものが、適切なITツールです。最近はITツールの開発も進み、電話・メール・チャットが可能なオンラインコミュニケーションツールも登場しています。それだけでなく、勤怠管理ができるアプリやソフトなど、便利なものが次々と誕生しました。

リモートワーク(テレワーク)では、こうしたITツールが役立ちます。ただし、何を導入するかは企業によって向き不向きがあるので、自社に合ったものを厳選する必要があるでしょう。

 

コミュニケーションの取りやすい環境づくり

在宅ワークはその性質上、どうしてもコミュニケーションが取りにくい環境です。ゆえに、従業員は孤立感や孤独感を強め、企業への所属感も薄れてしまいます。その結果、プロ意識に欠けた行動を取ってしまうこともあるでしょう。

そうなると怠慢に陥りやすくなる他、情報漏洩などのリスクも発生します。正当に評価されていないと感じる従業員ほど、企業との一体感を失い、空中分解してしまうこともあるでしょう。それを防ぐためには、普段からのコミュニケーションが必須。毎日1回は連絡を取り合う環境をつくる他、定期的な報告を義務付けるのもおすすめです。

まとめ

リモートワーク(テレワーク)は雇用型と自営型が存在し、ワークスタイルによって変わります。企業が在宅ワークを導入する場合、それらのワークスタイルに合わせた法令の遵守が必要となります。

当然、それに合わせて就業規則を見直したり、変更したりしなければなりません。また、労働時間の把握や評価制度の改正、安全衛生教育の実施も必要となるでしょう。この点は企業側がどのように対応するかで左右されるので、従業員の意見も取り入れながら進めることをおすすめします。