リモートワークのマネジメントを成功させるには?テレワークの課題も解説
リモートワークの普及により、自宅で働く人も定着しつつある現代。新たな働き方として、テレワークが注目されています。最近では自宅だけでなく、カフェやコワーキングスペースで働く光景も珍しくはありません。
しかし、在宅勤務などフルリモートでの仕事の場合、マネジメントできず作業効率が下がる人もいます。そうなると業績が上がらず、企業にとっても良い結果にはつながりません。そのような背景から、マネジメントの大切さが叫ばれています。今回の記事では、在宅ワークでマネジメントを成功させるにはどうすればよいのか解説します。
リモートワークのマネジメントの課題
まずは、リモートワークのマネジメントの課題を4つ紹介します。
- 進捗管理が難しい
- コミュニケーション不足が起きやすい
- 評価指標を変える必要がある
- 上司自身も正しいマネジメントを知らない
それぞれ見ていきましょう。
1.進捗管理が難しい
リモートワークは、業務の進捗管理が困難です。オフィスで仕事する場合、上司が部下に随時進捗確認できるため、業務もスムーズです。しかし、テレワークは遠隔で仕事をしているので、確認する術がありません。常に報告を義務付けていても、8時間確認し続けるのは難しいですよね。それゆえ、進捗管理が思うように進まないわけです。
チーム内でも、各メンバーの進捗状況を共有できず、お互いにどこまで仕事が進んでいるのか把握できない状況に陥りやすいです。結果、組織の目標に対して、達成度が不明瞭な状態が続きます。これによりチームの生産性が落ち、業績にも影響を与える可能性があるわけです。
また雇う側が働く側に対して「真面目に働いているのか」と不信感を募らせることもあるでしょう。逆のケースもあります。在宅ワークは、お互いに顔を合わせて仕事できないため、進捗管理含め統率を取れないのが、大きな課題となるでしょう。
2.コミュニケーション不足が起きやすい
リモートワークは、自由に働ける理想のスタイルではあるものの、コミュニケーション不足が起こりやすいのも問題です。オフィスなら上司から部下、部下から上司への報連相もスムーズですがテレワークの場合、必然的に会話の回数が減ります。遠隔でのコミュニケーション方法は、電話やメールなどが中心となるでしょう。
企業のなかには、チャットのみのテキストでコミュニケーションを図るところもあります。確かに、こうしたテクノロジーを駆使したコミュニケーション方法は便利です。しかし、テキストでの対話は、相手の反応がわかりません。表情や仕草も伝わらないので、どのような意図での発言なのか判断しかねる場合があります。
また人によっては、部下への指示が伝わったかわからず、何度も確認を入れることもあるでしょう。逆に上司から指示を受けたものの、理解できないまま仕事に入ることもあるのではないでしょうか。このようにコミュニケーション不足により、お互いが疑心暗鬼になってしまう、それこそが在宅ワークの大きな課題です。
職場の仲間との会話が減ることで、孤独感や孤立感が強まる人もいます。マネジメントとは話が脱線するので割愛しますが、社会への所属感が失われやすくなるのも、在宅ワークの課題といえるでしょう。
3.評価指標を変える必要がある
リモートワークを導入する場合、従来の評価指標を見直す必要があります。従業員が出社してオフィスで働く場合、その仕事ぶりも人事評価に伝わりやすいでしょう。しかしテレワークの場合、本人の仕事ぶりが見えてきません。どのように行動し、どのように成果を出したのか、その点の判断が曖昧になりがちです。ゆえに、正当に評価されていないと感じる在宅ワーカーもいます。
努力しても報われない状況は、働く人の意欲を削ぐだけでなく、組織全体のモチベーションを阻害する要因に。だからこそ適切な評価指標を設け、外部で働く人も正当に評価できるようにしなくてはなりません。
在宅ワークの場合、評価は成果物に対してのみとなりがちです。納品するまでの過程を見ず、成果物で人事評価を決める企業もあります。確かに判断材料がないため、成果物でしか評価できない状況も理解できます。しかし、在宅ワークが普及した現代。新たな評価指標を設けないと、働く人のやる気に多大な影響を及ぼすことも。その点は企業が率先して、内部構造を変えていく努力が必要です。
4.上司自身も正しいマネジメントを知らない
現状、上司自身が正しいマネジメント方法を知らないことも問題です。従来までは、職場で部下に声をかけることで、本人の健康状態や心理状況を把握していた上司もいるでしょう。しかし在宅ワークが普及したことで、そもそも「どのように関係を築けばよいのかわからない」上司も多いです。逆に、部下自身も「どう接していくべきなのかわからない」状況が少なくありません。
このように、社会全体がまだリモートワーク(テレワーク)に適応できていないのも課題です。今後は適切なマネジメント方法が確立されていくと考えられますが、方法は多種多様。何が正解で何が不正解なのか、そこは誰にもわかりません。むしろ、個人個人でマネジメント手法を変える必要もあるでしょう。
つまり、上司部下に関係なく、お互いが在宅勤務に対してどのようにアプローチできるかをじっくり話し合うことが大切です。なかには、新型コロナウイルスの蔓延により、見切り発車のまま在宅ワークを導入した企業もあるのではないでしょうか。
当時は誰もが手探り状態でした。右も左もわからないまま突き進んできた企業もあるでしょう。しかし、リモートワーク(テレワーク)が普及した今、新たなマネジメント手法の確立が求められています。
リモートワークのマネジメントを成功させるには?
ここからは、リモートワークのマネジメントを成功させるにはどうすればよいのかを解説します。
心理的安全性を確保する
リモートワークで欠かせないマネジメント、それが心理的な安全性確保です。心理的安全性とは、従業員が安心して自分らしく働ける環境が整備されており、周囲にも相談しやすい状態であることを指します。仲間を信頼・尊敬してチームに参加でき、サポートを受けられる状態が整って初めて、心理的安全性が確保されているといえるでしょう。
もちろん「心理的安全性=仲良し」ではありません。職場が和やかな雰囲気に越したことはありませんが、心理的な安全性は人事評価を気にせずお互いが発言できる状況を指します。それが、結果的に生産性の高い意見を生み出し、企業全体の業績につながるわけです。
こうした心理的安全性を生むには上司が部下を信用し、相手の意見に耳を傾ける姿勢が重要。部下の発案に対して上司は頭ごなしに否定するのではなく、議論の余地があるかの検討も大切です。これにより、部下も上司に自分の発想を伝えやすくなり、今までになかった視点が生まれることもあるでしょう。
気軽に質問できる仲間がいる環境は、働く人にとって安心です。まずは、心理的安全性を確保し、上司と部下が一丸となって問題を解決できる環境づくりがカギとなります。その第一歩として、コミュニケーションの強化を進めましょう。
見える化・共有化を図る
リモートワークは、お互いが見えにくくなるのも問題。例えば、従業員がフルリモートの場合、上司は「真面目に働いているのか」と疑心暗鬼になりがちです。部下も「正当に評価してくれるのか」と不安や心配を抱えやすくなります。これはお互いの仕事が見えない、テレワーク特有の現象です。それゆえにチームの一体感が失われ、生産性の低下につながることも。
そのような問題を解消するには、見える化・共有化を図ることが大切です。まずは、経営理念や経営戦略、ビジョンやスケジュール、業務の目的・納期・課題や評価基準を見直しましょう。従来のやり方も間違いではありませんが、在宅ワークに適応した方法が必要です。
特に「何のための仕事なのか」を明確にすることで、在宅ワーカーの組織へのコミットメントが高まるとされています。組織の理念や戦略が見えてくれば、働き手のプロ意識の醸成にもつながり、結果的に仕事に対する迷いも消えるでしょう。また人事評価に対しても、明確な基準を設けるなど、工夫次第で働き手のモチベーションにも影響します。在宅ワークの見える化・共有化は、やる気を引き出すための道標にもなり得るわけです。
ICTツールを活用する
現代はICTツールの開発が加速しており、リモートワークに応用できるものもあります。例えば、オンラインでコミュニケーションできるチャットツールを駆使すれば、迅速な業務連絡が可能となります。簡単な連絡で電話やメールを使用するのは手間ですが、チャットであれば気軽に連絡できて便利です。
最近ではWeb会議用のICTツールも進化し、さらに迅速なやり取りが可能となっています。いつでもどこでも仲間とつながっていられる時代。インターネット環境があれば、テレワークの効率はさらに加速するでしょう。他にもコミュニケーションツールだけでなく、千差万別のICTツールが登場しています。
- Web会議ツール
- チャットツール
- バックオフィスツール
- バーチャルオフィスツール
- ファイル共有ツール
- セキュリティツール
- リモートアクセスツール
- 顧客対応ツール
- 電子契約ツール
今後もICTがさらに成長すれば、できることも今よりさらに増えるでしょう。それは業務の効率化だけでなく、新たな働き方を生み出す原動力にもなります。すでに在宅ワーカーのなかには、ICTツールを活用して完全在宅で働いている人もいます。これもハイテクノロジーが生んだ、新たな働き方といえるでしょう。
適切な業務へアサインする
「適材適所」は、在宅ワークが普及した現代でも大切です。仕事の管理者は、メンバーそれぞれの適性・能力・業務スピードを見て、適切な業務へのアサインが求められます。適切な業務へのアサインは、組織目標を達成する際の最重要ポイントとなるでしょう。
例えば、単独で任せる業務と複数で共同作業する業務の場合、適切に分類して仕事を割り当てることで、効率化が目指せます。チーム一丸で目標達成に向けて突き進む体制が構築できれば、結果にもつながりやすくなるでしょう。
逆に、本人の向き不向きを考慮せず仕事をアサインすると、生産性は上がりません。なかには、結果が出ないことを部下の責任とする場合もありますが、アサインした上司の責任でもあります。その点は働く人と向き合いながら、どのように仕事を割り振りするか考える必要があるでしょう。
目的と仕事内容を明確化する
在宅ワークに限らず、自分に与えられた仕事が何のための作業なのかわからないこともあります。その場合、働き手は方向性を見失い黙々と作業をこなすだけになってしまいます。どれも立派な仕事ではあるものの、明確な目的と仕事内容がないと、働き手は一種の遭難状態となるわけです。
そのため、管理者は目的と仕事内容を明確化しましょう。全体的な大枠を伝え、それぞれの仕事がどのような結果に結ばれるのか。そういった点を詳しく伝えておくことで、取り組んでいる業務の意義も見えてきます。これは働き手にとって、迷子にならないための道標でもあります。
できれば、小さなステップをクリアするマイルストーンの設定がおすすめ。そのステップを乗り越えることで、大きな目標が達成できるようになるのではないでしょうか。
まとめ
リモートワークは、マネジメント次第で結果が変わります。本人のセルフマネジメントも重要ですが、まずは管理者が適切にマネジメントできるかが求められるでしょう。テレワークの場合、仕事の進捗状況が把握できなかったり、コミュニケーションが不足したり、課題も多くあります。他にも評価基準が曖昧で、従業員が正当に評価されていない場合も少なくありません。
こうした課題に対処するためには、適切なマネジメントを実施する必要があります。まずは、心理的安全性の確保や見える化・共有化の実現、ICTツールの活用を考えてみましょう。他にも、適切な業務へのアサインや目的と仕事内容の明確化など、管理者が実施すべきマネジメント方法はいくつか存在します。実践できそうなところから始めてみましょう。