フルリモートによるコミュニケーション問題とは?解決策も紹介

出社義務がないフルリモートという働き方は、従業員の通勤負担を減らしてワークライフバランスに貢献する反面、コミュニケーションが不足するデメリットを伴います。実際にフルリモートを導入してから、チーム間のコミュニケーション不全を感じている企業も多いでしょう。

今回は、フルリモートによって具体的にどのようなコミュニケーションの問題が生じるか、またその対策も解説します。またフルリモートするうえでコミュニケーションの問題を抱えやすい人の特徴も紹介するので、管理職の皆様はマネジメントの参考にしてください。

フルリモートによるコミュニケーション問題とは?

フルリモートによるコミュニケーション問題とは?

フルリモートが組織内で広がると、どのようなトラブルが想定できるでしょうか。考えられるのは主に以下の3つです。

  • 孤独感によるストレスを感じる
  • チャットやメールのみでは足りないと感じる
  • チャットのみだと冷たい印象を与えることも

それぞれ詳しく解説します。

 

孤独感によるストレスを感じる

フルリモートで働いていると孤独感が募っていき、深刻なストレスとなる場合もあります。

フルリモート下では、上司や同僚とのコミュニケーションの中心はビジネスチャットです。オンライン会議ツールで顔を見て話すこともできますが、日頃のやり取りは文字だけのチャットで十分事足りるでしょう。

しかし、チャットやメールでは互いに事務的な態度になり、業務に関係のない話をしにくくなります。オフィスで顔を合わせていたときは気軽に雑談を楽しんでリフレッシュできていたのに、フルリモートになると気持ちの切り替えができず、そのために孤独を感じるようになる人もいるでしょう。また仕事の合間や退社後に同僚と食事に行く機会なども作れず、実際に職場の人間関係が希薄になることも問題です。

 

チャットやメールのみでは足りないと感じる

チャットやメールだけでは、業務をスムーズに進めるために必要なコミュニケーションが取れない場合もあります。文字だけで正確に自分の意図を伝えるためには、一定以上の文章力が求められます。特にチャットはスピードが速く、ゆっくり文章を推敲する時間がないため、認識のずれが起きやすいでしょう。ときには自分の意図と違う解釈をされてしまい、互いに誤解した状態で業務を進めた結果、思いがけないトラブルが起きる可能性もあります。

またチャットやメールは対面よりも返信のスピードが遅くなるため、コミュニケーションがスムーズに進まないこともストレスです。目の前の相手に直接話しかけられれば数秒で済むやり取りが、チャットやメールでは数分かかる場合もあります。相手が今忙しいかどうかも見えないために、なぜ返信が遅れるのかもわかりません。チャットやメールのコミュニケーションは、無用な不安や苛立ちの原因にもなるのです。

 

チャットのみだと冷たい印象を与えることも

チャットやメールの事務的な文章は、ときに冷たい印象を与えることにも注意が必要です。

特にまだ入社したばかりで上司や同僚との関係が築けていないメンバーの場合、端的な指示やフィードバックを与える文面から「相手が怒っている」「機嫌が悪そう」などの間違った認識をしてしまう可能性があります。さらにフルリモートの状況では誤解や偏見を解消する機会も少ないため、ネガティブな感情を引きずったまま業務に取り組まなくてはなりません。

対面のコミュニケーションであれば、人は話すときの表情や声のトーンなどから相手の感情を推察します。しかし文字だけのやり取りではそうした情報の助けがないため、言葉のちょっとしたニュアンスにも過剰に反応する傾向があるのです。

フルリモートでコミュニケーション問題が起こりやすい人の特徴

フルリモートでコミュニケーション問題が起こりやすい人の特徴

フルリモートではコミュニケーションのトラブルが起きる可能性が高まりますが、すべての人が必ずそのような問題を抱えるわけではありません。フルリモート下でのコミュニケーションが特に苦手な人の特徴は、以下の3タイプです。

  • 伝わりやすい文章を書くのが苦手な人
  • 感情に起伏がある人
  • 対面で話すことに慣れている人

それぞれ詳しく解説します。

伝わりやすい文章を書くのが苦手な人

文章でのコミュニケーションに慣れていない人は、ビジネスチャット中心のフルリモートワークでやり辛さを感じるでしょう。チャットでは端的かつ意味が明確な文章を書かなくてはなりません。しかし、チャットでのやり取りに慣れていない人は、無駄に長く要点がわかりづらい文章を書いたり、主語や述語が曖昧な文章を書いたりしがちです。そうすると読み手にストレスを与え、ときには深刻な誤解を生むこともあります。

そうしたトラブルを何度か経験すると、ますますチャットに苦手意識を募らせることも問題です。次第に必要な報告や連絡も滞りがちになり、業務全体に影響を与える可能性があります。

 

感情に起伏がある人

感情に起伏がある人は、特にフルリモートのコミュニケーションにストレスを感じやすい傾向があります。ビジネスチャットは基本的に必要最低限のやり取りです。仕事で失敗して落ち込んでいるときでも相手から労わるような声かけはなく、ただ必要事項を伝えられるだけになります。またチャットのやり取りで誤解やすれ違いがあって不安を感じたとき、フルリモートでは周囲に人がいないためフォローしてもらえず、より孤立感を深める可能性があるでしょう。

感情に起伏がある人は、こうした状況に陥ったとき気持ちのやり場がなく追い詰められてしまいます。淡々と業務に取り組める人はフルリモートのコミュニケーションにも適応できますが、自身の感情がうまくコントロールできない人の場合、多大なストレスを感じるでしょう。

 

対面で話すことに慣れている人

対面でのコミュニケーションが得意な人の場合、ビジネスチャット中心のやり取りはかえって不得手なケースが多くみられます。人は対面で会話するとき、表面的な言葉だけでなく多くの情報をやり取りしながらコミュニケーションを取っています。例えば互いの表情や声のトーン、テンポなどです。対面でのコミュニケーションに慣れている人は、これらの情報を便りに会話をコントロールしようとします。しかし、チャットは文字のやり取りだけで圧倒的に情報量が少ないため、相手の言葉一つでもどう受け取ってよいのかわからなくなってしまうのです。

対面で話すことに慣れている人は、チャットの無機質な文章を見て相手の態度を誤解したり、自分の感情までうまく文字で伝えようとして長文になってしまったりする傾向があります。反対に対面と同じ感覚で短い言葉で伝えようとし、相手に十分に伝わらずトラブルになるケースもあります。しかも本人はいつも通りに会話しているつもりなので、自分のコミュニケーションのどこに問題があるのか、なかなか気づけないのです。

フルリモートのコミュニケーション問題を解決する5つの対策

フルリモートのコミュニケーション問題を解決する5つの対策

フルリモートであっても、組織としてコミュニケーションを円滑にするためのルールづくりをすれば、トラブルを避けることは可能です。なかには、ちょっとした工夫でメンバーの意識を変えられる方法もあります。フルリモートの導入時に取り組みたい、おすすめのコミュニケーション対策は以下の5つです。

  1. ルールを設定する
  2. チャットコミュニケーションだけにしない
  3. サンクスカードを導入する
  4. 全従業員ミーティングを徹底する
  5. メンバーの役割を明確にする

 

それぞれ詳しく解説します。

1.ルールを設定する

チャットやメールのやり取りで不要なストレスを感じないためには、あらかじめルールを決めておくのがおすすめです。例えば「チャットの返信は必ず10分以内にすること」といったルールがあれば、スピード感を落とさずスムーズにやり取りできるようになります。これまでつい後回しにしていたチャットの返信も時間に関するルールがあれば、すぐに対応するようになります。返信を待つ側も、返事が遅いときに「相手が忙しいときに連絡してしまっただろうか」「送信した内容を見て何か不快にさせてしまっただろうか」などの不安を感じずに済むでしょう。

なお、本当に忙しくてすぐに返信ができないケースもあるため、あらかじめその日のスケジュールが詰まっている時間帯を周囲に知らせておくという配慮も必要です。またどうしても返信が遅れてしまったときには、理由を伝えることもルール化しておきましょう。

 

2.チャットコミュニケーションだけにしない

チャットやメールだけでなく、ときには互いの顔を見てやり取りする機会を設けることも大切です。Web会議システムを利用すれば、フルリモートでもチームのメンバー全員が顔を合わせて話すことができます。

1日に1度はミーティングの場を設けて、チーム間の連帯を高めてもよいでしょう。また重要な報告や相談は、声のトーンが伝わる電話でのやり取りのほうが適しているケースもあります。感情的になることが想定される話題では、文字だけのやり取りで間違った認識を持たれないよう注意が必要です。

ビジネスチャットは手軽なコミュニケーションの手段です。フルリモートで活用していると、すべてのやり取りをチャットやメールに頼りがちですが、コミュニケーションの目的によって手段を使い分ける工夫も必要でしょう。

 

3.サンクスカードを導入する

フルリモート下でのコミュニケーションを促進するには、サンクスカードの導入も有効です。サンクスカードとはメンバー同士で気軽に感謝や賞賛を伝え合うシステムです。サンクスカードを贈り合えば、離れて働いていても互いの存在を認め合い、同じ目的に向かって一緒に努力しているという連帯を感じられるのではないでしょうか。

またサンクスカードを受け取ると、自分の仕事を見てもらっている実感が得られて孤独感が解消します。フルリモートでは対面時のように丁寧な評価やフィードバックが得られないため、サンクスカードという形でその機会をつくれば、メンバーの自信とモチベーション向上につながるでしょう。

 

4.全従業員ミーティングを徹底する

フルリモートでは、積極的に全従業員ミーティングの機会を設けるようにしましょう。Web会議システムで互いの顔を見れば、チームとしての一体感が高まります。

またメンバーの意見や質問に答える場をつくり、風通しを良くする意味合いもあります。普段なかなかチャットやメールでは言えないことも、顔を合わせるミーティングの場では気軽に口にできるようになるでしょう。

フルリモートでは全員の顔を見る機会は貴重です。全従業員ミーティングは情報共有・理念や方向性の確認・メンバーのコンディションの確認のために、有効に活用しましょう。

 

5.メンバーの役割を明確にする

チャットコミュニケーションの認識のずれによるトラブルのリスクを抑えるためには、各々の役割を明確にすることが大切です。国内の企業は長年メンバーシップ型雇用が主流だったため、個人の業務の境界線や責任が曖昧になる傾向があります。そのためフルリモートでメンバー間のコミュニケーションが滞ると、業務全体の生産性が低下してしまうのです。個人の役割が明確になっていれば、頻繁にやり取りして連携をとらなくても業務はスムーズに進みます。

チームワークも大切ですが、メンバー同士が離れて働くフルリモートでは、個人の自己管理能力と責任感がより求められます。フルリモートの導入は、各々が責任を持って業務に取り組む新しい組織づくりのきっかけにもなるでしょう。

まとめ

フルリモートではチャットやメールでのやり取りが中心となり、メンバー間のコミュニケーションに問題を生じるリスクがあります。特に文字だけで自分の意図を伝えるのが苦手な人や、対面でのコミュニケーションに慣れている人は、フルリモートでのやり取りにストレスを感じやすいでしょう。また事務的な文面や返信の遅れに、過剰にネガティブな反応をしてしまうタイプの人もいます。

フルリモートでのコミュニケーションを円滑にするためには、組織としてのルールづくりが必要です。自社のメンバーの誰もがストレスフリーに業務に取り組めて、フルリモートでも自分の存在や仕事ぶりを認めてもらっていると感じられるようなルールとは何かを考えてみましょう。