在宅ワークで正社員は可能?どういった職種・事例があるかも解説
場所や時間にとらわれずに仕事ができる「在宅ワーク」は、ライフステージの変化に合わせた働き方を可能にする魅力的なワークスタイルです。今回は、在宅ワークができる正社員の職種や在宅ワークを導入している企業の事例について詳しく解説します。
在宅ワークで正社員は可能?
正社員として「在宅ワーク」で働くことは可能です。社員でありながら自宅で仕事をするスタイルは、以前は一部の企業だけでの取り組みでしたが、現在では在宅ワークを導入する企業が増えてきています。インターネットの普及により自宅で仕事がしやすくなり、働き方改革の一環として在宅ワークが推奨されていることもあって、今後のさらなる発展が期待されている働き方です。
ただし、すべての職種が在宅ワークに向いているわけではありません。在宅ワークに向いているのは、パソコンを使ってできる仕事や1人で作業が完結する仕事です。いざ正社員の在宅ワークで働こうと思っても、目指す職種が在宅ワークに向いていなければ企業での導入も難しいでしょう。まずは在宅ワークに適した職種を調べて、自分に合った仕事を選んでみましょう。
在宅ワーク(テレワーク)の種類
在宅ワークはテレワークの一種です。テレワークとは、情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した働き方のことを指します。
在宅ワークには、社員や業務委託、パートやアルバイトなどのさまざまな契約形態があり、通勤時間が必要ないことや業務時間が選べることなどがメリットです。在宅ワークはオフィスへ出社する必要がないので、自宅から離れられない事情がある方でも無理をせずに働けます。ただし、「仕事とプライベートの切り替えが難しい」「長時間労働になりやすい」といったデメリットも聞かれます。
テレワークはオフィス外で働くことを指す言葉ですが、働く場所によって「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイルワーク」の3つに分類できます。また、オフィスには出社しない前提の完全なテレワークや決められた日数だけオフィス以外の場所で仕事をしてオフィスにも出社する日がある混合型のテレワークなどがあります。
在宅勤務
「在宅勤務」とは、企業に雇用されて自宅で仕事をする働き方です。オフィスに出社する必要がなく自宅で作業ができるので、通勤時間がなくなり、空いた時間を有効に使えます。多くの社員が出入りするオフィスと違い、静かな環境が整えやすくなるので集中して業務を行えるでしょう。勤務日のすべてで在宅業務を行う「完全在宅勤務」や週の半分はオフィスに出社し、それ以外は在宅で業務をする混合型の働き方があります。
ただし、職場が自宅になると仕事とプライベートの切り替えが難しくなるため、自己管理意識の徹底が大切です。また、社員同士のコミュニケーション不足も懸念されるため、社内での情報共有を取りやすい体制づくりも必要になります。
在宅勤務は社員の「ワーク・ライフ・バランス」を実現するうえで効果的な働き方です。「子どもが小さいから外に働きに出られない」「家族の介護が必要で……」というように、育児や介護、けがや病気などの理由で働くことが難しい方に、自宅で仕事ができる在宅勤務はぴったりの働き方だといえるでしょう。
サテライトオフィス勤務
「サテライトオフィス勤務」とは、所属するオフィス以外のオフィスや遠隔業務用の施設で働くことです。サテライトは、英語で衛星を意味する「satellite」が由来で、「惑星(本拠点)を周回する衛星のように存在する」といった意味で使われています。支社や支店とは異なり、「都市型サテライトオフィス」「郊外型サテライトオフィス」「地方型サテライトオフィス」の3つに分類されます。
社員の自宅近くにサテライトオフィスやレンタルオフィスを設けると、通勤時間が削減でき、パソコンや通信環境を社員自ら用意する必要がなくなります。自宅で仕事をする場合には、働き手自身が必要な仕事環境を整えなければなりません。サテライトオフィスには仕事環境が整っているため、スムーズに作業が始められます。
また、お客様の事業所や打ち合わせ場所に近い施設を利用すれば、スピード感のある対応も可能です。ただし、サテライト勤務務では、オフィスと同等のセキュリティ対策が必要であり、コミュニケーション不足などへの工夫も考える必要があります。
サテライトオフィス勤務を利用すれば、移動時間の短縮や住む場所の選択肢が増え、結果的に「ワーク・ライフ・バランス」が整いやすくなり生産性の向上にもつながります。
モバイル勤務
「モバイル勤務」とは、交通機関での移動中や顧客先、カフェなど、拠点を定めずに仕事をする働き方です。在宅業務やサテライトオフィス業務と異なる点は、いつでもどこでも仕事ができることで、ノートパソコンやタブレットをはじめとした、持ち運びに便利なモバイル端末を利用して時間を有効に使います。
モバイル勤務は外出や出張が多い営業職などに適した働き方で、移動時間を有効に使えるので生産性を向上させる効果が期待されます。外出先からわざわざオフィスまで戻って仕事をしていた時間を他の作業にあてれば、仕事が早く終わり、プライベートの充実にもつながるでしょう。移動中に社員同士が連絡を取り合うことで、緊急時などにも迅速な対応が可能です。ただし、不特定な場所で仕事を行うため、セキュリティ面での対策が必要になります。
モバイル勤務のデメリット面を考慮しても、移動時間を有効に使え、お客様への迅速な対応ができるといったメリットがある働き方です。
在宅ワークができる正社員の職種一例
在宅ワークができる正社員には、どのような職種があるのでしょうか。在宅ワークをするためにはいろいろな条件があり、必ずしも希望した職種に在宅ワークの制度があるとは限りません。無理をせずに在宅で仕事ができる職種を選びましょう。
IT業界
「IT業界」は、在宅ワークとの相性が良いとされている業界です。ITとは、information technologyの略称で「情報技術」という意味があります。IT業界と在宅ワークとの相性が良いとされている理由は、パソコンとインターネット環境が整っていれば仕事ができるという点です。
IT業界の具体的な職種には、「プログラマー」「システムエンジニア」「Webディレクター」「Webデザイナー」「Webマーケター」などがあります。正社員としての求人も多く、完全在宅ワークから一部出社の在宅ワークまで、さまざま選択肢があるのも魅力です。
特に、プログラマーやシステムエンジニアは専門性が高いため、高収入も見込めます。Web関連の職種は今後の人材不足が予想されており、給与水準が高めのものが多いので、スキルを身に付ければ正社員として安定した在宅ワークも可能です。
保険業界
「保険業界」も、在宅ワークで働くならおすすめの業界です。「生命保険会社」「損害保険会社」「保険代理店」といった企業があり、それぞれの業務内容は異なります。
これまでは対面で話をする必要があったお客様対応も、新型コロナウイルスの感染対策などにより、非対面での業務が増えてきました。具体的には、「営業」「事務」「商品の開発企画」などの職種があり、商談から申し込み・契約締結までオンラインでの対応が可能です。
まずはオフィスに出社し、仕事に慣れれば在宅ワークもOKという企業が多く、未経験歓迎の求人も多く出ています。また、保険業界は比較的高収入で待遇が良いとされている業界であり、自身の生活に役立つ知識が身に付くなどのメリットもあるでしょう。
製造業界
現場の作業がメインとなる「製造業界」では、在宅ワークを取り入れるのが難しいとされてきました。しかし、すべての業務が対応できないわけではありません。
製造業界の職種は、製造部門以外にも「開発」「企画」「管理」「営業」などがあります。取り扱う商品も、自動車や衣服、化粧品などさまざまです。在庫管理の自動化を実現し、離れた場所から在庫の確認ができるようになるなど、IT環境の整備により在宅ワークを推進している企業もあります。製造業界で在宅ワークをしたい場合は、製品に直接触れる職種以外のバックオフィス関連業務がおすすめです。研修期間が終了すれば、在宅ワークOKという求人も多くあります。
事務・経理関連
「事務・経理関連」は、在宅ワークとしての人気が高く、需要も高い職種です。経理業務の仕事内容は、企業の資産の動きを管理・記録することで、記帳業務や請求書の発行、給与計算など多岐にわたります。オフィスでなくとも在宅でできる作業が多いので、締め日や決算期などの必要な時期にはオフィスに出社し、それ以外は在宅で働くなど柔軟な働き方が可能でしょう。
事務の仕事内容は書類作成やデータ入力などで、基本的なパソコンスキルがあれば応募が可能な求人も多く、任される業務によっては事務未経験でも挑戦できるケースもあります。事務・経理関連の仕事は、「数字に対して苦手意識がない人」「コツコツした業務が得意な人」におすすめです。
人材業界
「人材業界」は、人材採用活動や人材派遣、求人広告の作成や人材コンサルティングなどを行う業界です。人材業界は働き方の多様化によりニーズが高まっている成長業界の1つです。
求職者とのWeb面談や応募書類のやり取りなどの作業はオンラインで完結できるので、人材業界では在宅勤務OKの求人も数多くあります。「未経験歓迎」「学歴不問」としている求人も多く、在宅ワークに人気の業界です。
人材業界に身をおけば、人の人生をサポートするやりがいや達成感があると同時に、自身のキャリアも充実させられるでしょう。人材業界は「人と関わることが好き」「誰かのサポートをしたい」といった方におすすめです。
正社員の在宅ワークを導入している企業の事例
近年の働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染対策により、正社員の在宅ワークを導入する企業は増加しています。在宅ワークは、社員にとっても、企業にとってもメリットが多く、多様な働き方を実現できるのが魅力です。ただし、セキュリティ面の不安や勤怠管理の課題などもあるため、企業独自のシステムや在宅ワーク向けの制度を設けることが必要になってきます。すでに在宅ワークを取り入れて成功している企業の事例を見ていきましょう。
ヤフー株式会社の事例
「ヤフー株式会社」は、インターネットの広告事業やイーコマース事業などを展開する大手のインターネット企業です。柔軟な働き方を実現できる制度「どこでもオフィス」を採用しており、働く場所や時間にとらわれない自由な働き方を選べます。2020年10月には在宅ワークの回数制限を撤廃し、どこでもオフィス手当てや通信費補助を新設するなど、より柔軟な働き方を目指した取り組みが進んでいます。
他にも、在宅ワークによるコミュニケーション不足の解消のために、飲食費用を補助する「懇親会費補助」の支給や、上司と部下が週に1回程度面談をする「1on1 ミーティング」などがあり、ヤフーでの副業を希望する人材を積極的に受け入れるなど独自の取り組みも活発です。
リクルートホールディングスの事例
「リクルートホールディングス」は、求人広告、人材派遣、人材紹介などのさまざまなサービスを提供する企業です。2015年に働き方変革プロジェクトを立ち上げ、在宅ワークなどの働き方を導入しています。2016年1月には全社員を対象として、日数制限なしの在宅ワークを本格的にスタートしました。リクルートホールディングスは出社しないことを前提とした働き方を実現しており、自宅だけではなくサテライトオフィスやカフェ、コワーキングスペースでも業務ができるなど、自由度が高いところが特徴です。
日本オラクル株式会社の事例
「日本オラクル株式会社」は、情報システム構築のためのソフトウェア・ハードウェア製品の開発および製造、コンサルティングやサポートサービスなどを展開している企業です。2002年から在宅勤務制度を導入してきたテレワークの先駆的企業で、日本テレワーク協会の第16回テレワーク推進賞を受賞しています。
在宅ワークの実施が少ない時代から積極的に制度を導入していた企業の1つであり、その取り組みは東日本大震災発生時の事業継続にも役立ちました。現在でも在宅ワーク制度は有効活用されており、セキュリティツールの導入とルール作り、社員教育など多面的な対策を実施し、在宅でも仕事ができる環境を整えています。同社では「Work@Everywhere」をコンセプトとして、在宅ワークでも安心かつ快適な就業環境の整備を推進しています。
在宅ワークができる正社員になるためには?
社員として在宅ワークをするなら、パソコンスキルや専門スキルの取得が必須です。スキルを身に付けて、求人サイトから気になる企業に応募してみましょう。
在宅ワークができる職種のスキルを身に付ける
在宅ワークで働くなら、タイピングやメール対応などの基本的なパソコンスキルは必須です。すべてのやり取りをパソコンやスマートフォンなどで行うため、必要となるパソコンスキルを身に付けましょう。
また、オンラインならではのコミュニケーションスキルも必要です。対面で会話をすれば問題がないやり取りでも、テキストメッセージでは文体1つで印象ががらっと変わってしまう可能性があります。Web会議では仕草や表情が伝わりにくく、ニュアンスの読み取りが難しいと感じることもあります。在宅ワークでは、対面のとき以上に積極的かつ丁寧なコミュニケーションを取ることが大切です。
また、職種によってはプログラミングやデザインなどの専門的なスキルの習得が必須です。スキルの習得までに費用や時間がかかりますが、一度身に付ければ一生使えるスキルになります。
なかには、専門知識がなくても始められる仕事もありますが、そういった仕事は単価や年収が低いというデメリットを考慮しなければなりません。できるだけ高収入を目指すなら、専門的な知識やスキルが必要になる職種がおすすめです。書籍を読んで勉強したり、セミナーに参加したり、スクールに通ったりして、専門的な知識を身に付けるとよいでしょう。
求人サイトから応募できる会社を見つける
在宅でできる仕事を探すためには、求人サイトの利用がおすすめです。求人サイトへアクセスし、正社員で在宅ワークが可能な求人を調べてみましょう。人材業界が活況の折、大手の求人サイトから主婦(主夫)向けのものまでさまざまな求人サイトがあり、求人数も豊富です。検索条件を「正社員」に指定し、「在宅」「テレワーク」「リモート」といったワードで検索してみると希望の職種がヒットしやすいでしょう。求人情報は頻繁に更新されるため、興味がある分野をこまめにチェックしてみましょう。
これから在宅ワークができる正社員になる方が留意するべきこと
自由度が高そうなイメージのある在宅ワークですが、オフィスに出社する場合と同じように「働く」のは変わりません。むしろ、在宅ワークだからこそ気を付けなければならないポイントがあります。在宅ワークで失敗しないためにも、「仕事環境」「コミュニケーション」「在宅ルール」の3つのポイントを押さえておきましょう。
自宅の環境をしっかりと整える
在宅ワークを行う場合、まず自宅内で仕事用の環境を作らなければなりません。業務をスムーズに行うためにも、意識的に環境を整えるのが大切です。作業を行うための空間や机、椅子などの備品、照明や室内温度などに気を配って仕事スペースを充実させましょう。
また、仕事とプライベート空間とを分けることによって、オンオフの切り替えがしやすくなります。さらに、Web会議やデータのやり取りで必要となる高速回線のWi-Fiを設置したり、スムーズに作業できるスペックを兼ね備えたパソコンを用意したりできるとよいですね。集中して仕事ができる環境が整えば、作業スピードもアップします。
プライベートスペースとワークスペースを分けることが難しい場合は、パーテーションを活用して生活スペースを遮断するとよいでしょう。オフィスと変わらないパフォーマンスで作業ができるように、自宅の環境をしっかりと整えることが大切です。
相手を心配させないコミュニケーション頻度・方法を知る
在宅ワークは、社員同士のコミュニケーションが取りにくい傾向があります。そのため、相手を心配させないコミュニケーションの頻度や方法を知っておくと安心です。
在宅ワークではテキストでのやり取りが中心になり、直接顔を合わせる機会が減ってしまいます。対面で話せばすぐに解決することも、お互いの様子がわからない状況では時間がかかる場合があるでしょう。言葉の意味を取り違えて誤解したり、相手に誤解されたりしまう可能性も考えられますね。テキストコミュニケーションでの文面はできるだけ柔らかい表現にして、誤解を招くリスクを減らしましょう。
社員同士のコミュニケーションの低下は、業務に対するモチベーションや生産性の低下につながります。オフィス出社時よりもコミュニケーションを取ることを意識しましょう。
コミュニケーション不足を解消する方法には、「チャットツールの確認をこまめに行う」「スケジュールを積極的に共有する」「業務以外でのやり取りの機会をつくる」などがあります。レスポンスが1日以上ないと何かあったのかと心配になりますよね。コミュニケーションを積極的に取っている組織では、相手が今何をしているかが把握しやすく、連絡も密になり、情報共有のスピードが早まります。
在宅ワーク特有のルールがないかを確認する
多くの企業では、在宅ワークならではのルールが設けられています。在宅ワークを始める前に、オフィス出社時とは違った「特有のルール」を確認しておきましょう。
労働時間や業務の連絡方法、各種承認の受け方など、オフィス出社時とは異なる点が多くあります。日々の仕事の進捗状況を報告する日報の作成が必要な場合もあるでしょう。
時間や場所にしばられない在宅ワークだからといって、何もかも自由になるとは限りません。在宅ワークの制度をきちんと理解し疑問点は事前に確認しておけば、在宅ワークを発端とするトラブルの回避につながります。
まとめ
場所や時間にしばられず、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる「在宅ワーク」は、働き手と企業の双方にさまざまなメリットがある働き方です。IT業界や保険業界、人材業界、メディア業界などでは在宅ワークOKな正社員の求人も多く出ており人気を集めています。
安定した正社員として在宅ワークで働きたい場合、在宅ワークに向いている職種を選ぶことがポイントです。基本的なパソコンスキルやコミュニケーションスキル以外にも、職種の専門的なスキルを身に付ければ、より選択肢が広がるでしょう。
また、スムーズに在宅ワークを行うためには自宅の環境整備やルールの徹底も大切です。正社員としての在宅ワークを始めて、理想のライフスタイルを実現させましょう。