リモートワークでメンタル不調になる原因となりやすい人の特徴
リモートワークでストレスにさらされ、メンタルの不調を感じる人が増えています。メンタル不調が続けば、仕事やプライベートに大きな影響を与えかねません。今回は、リモートワークでメンタル不調になる原因と、どのような人がなりやすいのかを解説します。
リモートワークはメンタル不調になりやすい
オフィスに出社せずに自宅で仕事を行う「リモートワーク」は、コロナ禍で広く普及した新しい働き方です。オフィスでしていた仕事を自宅で行うと、通勤時間の削減や育児・介護と仕事の両立がかなうなど、さまざまなメリットがあります。
一方でデメリットもあり、リモートワークによる環境の変化にストレスを感じる人が増えているのが現状です。オフィスに出社していたときと比較して、「精神的・肉体的にきつい」などのネガティブな意見があり、早急なメンタルヘルス対策が求められています。
ではなぜ、リモートワークはメンタル不調になりやすいのでしょうか。一時的なストレスであれば対処もできますが、継続的にストレスを抱えたまま仕事を行えば、体調を崩す可能性もあります。リモートワークを原因とするメンタル不調にならないためにも、ストレスを感じる原因やメンタル不調になりやすい人の特徴を知ることが大切です。
リモートワークでメンタル不調になる原因
近年、リモートワークをはじめとした新しい働き方が普及し、メリットを享受する一方で、デメリットへの対策も必要になってきました。なかでも、リモートワーク特有の環境からストレスを感じメンタル不調を訴える人が増えています。リモートワークでメンタル不調になる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。ストレスを感じやすい6つのポイントを解説します。
コミュニケーションの機会が少ない
リモートワークはオフィスに出社する必要がないため、社員同士のコミュニケーションの機会が少なくなります。コミュニケーションの機会が少なくなると人との会話が減り、ストレスを溜めやすくなります。
人との会話は「カタルシス効果」ともいわれる心の浄化作用を持ちます。また、「話を聞く」という行為も脳の前頭葉の活性化を促し、リラックス効果があることが報告されています。オフィスで交わす、上司や同僚との何でもない会話がストレス解消になっていた人もいますよね。
リモートワークでは、対面で気楽にできていた雑談の機会が少なくなり、人との会話はWebミーティングで業務に関する会話のみと、必要最小限になりやすい環境です。リモートワークの1人もくもくと作業をする環境は、オフィス出社時よりも人との関わりが減ってしまうため、ストレスに感じてしまう人が多いと考えられます。
孤独を感じやすい
1人でリモートワークをしていると、さまざまな不安に襲われ孤独を感じやすくなります。自宅での仕事は、社会からシャットアウトされ外部とのつながりが減ったように感じる人もいるでしょう。
また、オフィスでは対面だったコミュニケーションがテキスト主体のチャットやメールになり、人とのやり取りが減ってしまいます。特に一人暮らしの場合は、誰とも会話をせずに1日、または1週間が終わってしまうかもしれません。
1人の時間が多いと「誰も自分のことを見ていない」「他の社員はどうしているのか」「自分の業務だけ遅れているのでは」などと、余計なことを考えて、心に余裕がなくなってしまいます。困ったときにすぐ聞ける上司や同僚が近くにいないことにも孤独感を覚えるでしょう。リモートワークの閉鎖的な空間が孤独を感じやすくさせ、自分でも気付かないうちにストレスが溜まってしまうのです。
相手の顔が見えないため不安になりやすい
働き方の1つとしてリモートワークが普及し、非対面でのコミュニケーションの割合が増えてきました。お互いの顔が見えない非対面でのやり取りは、便利な一方で相手の気持ちを察しにくく、相手がどう感じているのか不安になりやすいというデメリットがあります。
チャットで送った質問への返信が遅く、返信内容がそっけなく感じると、「自分が何かしてしまったのか」と心配になりますよね。相手の感情が気になって、仕事が手につかなくなることも考えられます。
リモートワークでは、相手の顔や状況が見えないので同僚や上司への相談のタイミングが難しく、疑問を先延ばしにしてしまう可能性もあるでしょう。そうなると、仕事の生産性やモチベーションの低下を招く恐れがあります。リモートワーク特有の、相手の顔が見えずスムーズにコミュニケーションが取れない環境が精神的な不安につながるのです。
成果につながっているのかわかりづらい
リモートワークは、上司から自分の姿が見えず、周囲の人へ自分のがんばりをアピールしにくいため、仕事のプロセスの把握が難しい働き方です。出勤・退勤の時間や仕事の進み具合などは自己申告になり、上司や同僚とのやり取りは報告などの業務連絡のみとなるケースもあります。
オフィス出社時であれば、お互いに褒めたり褒められたりと、感謝やねぎらいの言葉をかけることもあったでしょう。リモートワークでは、お互いに言葉をかける機会が少なくなり、自分の業務の成果を実感できるシーンが減ってしまいます。
自分としては真面目に業務に取り組んでいても、実際に成果につながっているのかが実感できなければ、仕事へのモチベーションも下がりますよね。また、仕事の成果や貢献度が伝わりにくいため、上司からの仕事の評価が下がっているように感じるかもしれません。
リモートワークは、オフィスでの勤務時のように仕事をする姿を上司に見せられないので、「公平・公正に評価してもらえるか不安」とネガティブな考えに陥りやすいのです。
家庭でのストレスも起こりやすい
家族と一緒に暮らしている場合、生活空間に仕事を持ち込むと家庭内での摩擦やストレスも起こりやすくなります。リビングやダイニングなど共有部分で仕事をすると、家族の行動が目について仕事が進まないことも考えられます。「同居している家族の生活音が気になる」「小さな子どもがいて集中できない」など、自宅で仕事をするとき特有の問題が発生しかねません。
また、リモートワークに対する家族の理解が得られていなければ、自宅での仕事がやりづらいものとなります。家族に気を使いながらの仕事は、集中できずに苦痛な時間になりますよね。
リモートワークは育児や介護などのプライベートな時間と仕事を両立しやすいのがメリットですが、家庭での摩擦やストレスも起こりやすいのです。
環境的に仕事がしづらい
自宅で仕事をするなら、オフィス出社時と変わらない仕事環境を自宅に整えなければなりません。適切な環境整備ができていないと、心身ともにストレスがかかり、予定通りに仕事が進まないでしょう。ストレスなく快適に仕事をするためには、仕事ができる十分なスペースやレイアウト、仕事内容に合ったスペックを持つパソコンやインターネット回線、集中を保つインテリアなどの環境づくりが大切です。
自宅の部屋の広さや間取りの関係で、個室の作業スペースを用意するのが難しい人もいるでしょう。半個室のスペースでも仕事はしやすくなりますが、わざわざワークスペースを新設するのは面倒だと感じて、リビングやダイニングのテーブルで仕事をしている人もいるかもしれません。
リモートワークは、オフィス出社時と比べるとオンオフの切り替えが難しい働き方です。普段、食事やゲームなどに使っているテーブルで仕事をしていては、気持ちの切り替えができずに集中力も途切れがちになるでしょう。
オフィスには仕事の環境が整っており、出社すれば自然とプライベートから仕事への気持ちの切り替えができました。生活空間を仕事場とすると、プライベートと仕事モードとの切り替えが難しく、強いストレスを感じることもありえます。
リモートワークでメンタル不調になりやすい人の特徴
リモートワークは、すべての人がメンタル不調に陥りやすいわけではありません。むしろ、オフィスに出社していたときよりもリモートワークが快適だと感じる人もいます。では、どのような人がメンタル不調になりやすいのでしょうか。メンタル不調になりやすい人の特徴を4つ解説します。
仕事に不慣れな人
仕事に不慣れな人は、慣れている人よりもメンタル不調に陥りやすい傾向があります。リモートワークは自分のスペースで作業ができるメリットがある反面、業務を十分に理解できていない新入社員や異動直後で環境が変わった人などには不向きです。
上司や同僚との新しい関係がつくれないままリモートワークがスタートすると、仕事に対する不安が大きく、作業の要領をつかめずに苦労することが予想されます。仕事に不慣れな人にとって、リモートワークの特殊な環境でのコミュニケーションの取り方や業務の進め方への戸惑いが、ストレスを感じてしまう原因になると考えられます。
環境面が整っていない人
効率良く仕事をするうえで、環境面の整備は大切です。リモートワークをする環境が整わずにやりづらさを感じてしまうと、目の前の仕事に集中できません。例えば、「家族の生活音が気になる」「デスクやイスが身体に合わなくて疲れる」などの悩みがあると、生産性やモチベーションの低下につながります。
また、インターネットの通信環境が悪い場合やパソコンの性能が業務に見合っていない場合、データの読み込み速度が遅く作業の中断を余儀なくされるため、ストレスを感じる原因になるでしょう。
ワンルームで暮らしている人
ワンルームで暮らしている人は、生活と仕事の切り替えが難しいため、そうでない人よりもストレスがかかりやすくなります。家に複数の部屋があれば作業環境と生活空間を分けられますが、ワンルームだと難しいでしょう。
せっかくリモートワークができる仕事環境を整えても、ベッドやソファが目につけば、つい休憩をとり過ぎてしまう可能性があります。ワンルームの閉鎖的で狭い空間では、生活との切り替えがうまくできず、気づけば長時間労働をしてしまう人もいますよね。そうなれば、十分な睡眠がとれずに心身ともに疲れてしまう事態も起こります。
家族との仲が良くないと感じている人
自宅で仕事をする場合、家族との仲が良くないと感じている人は、そうでない人よりもストレスを感じるでしょう。自宅に1人で住んでいれば問題ありませんが、家族と一緒に暮らしている人も多いですよね。
たとえ家族仲が良くても、一緒にいる時間が増えるとお互いの不満が増える傾向があります。そのうえ、家族との仲が良くないと感じている人は、一緒にいることでますます家族関係が悪化するかもしれません。夫婦間や親子・兄弟間の不仲から居心地の悪さを感じ、ストレスが溜まって心身の不調を訴えるケースが考えられます。
リモートワークでのストレスを溜めないためには?
リモートワークを起因とするメンタル不調をそのままにしておくと、生産性の低下だけではなく、うつ病や適応障害など深刻な事態につながる可能性があります。心身の不調を防ぐためにも、異変を感じる前からの積極的なメンタルケアが大切です。リモートワークによるストレスを少しでも減らすためには、どのような方法があるのでしょうか。自分でできる4つのポイントを解説します。
作業環境を整える
リモートワークのストレスを減らすには、快適に仕事ができる作業環境を整えることが有効です。手間がかかるからと、環境を整えずにリモートワークを始めると、仕事のやりづらさにストレスを感じてしまいます。作業を行うのに十分なスペースが取れているか、明るさや室温・湿度は適切か、ちょっとした気分転換になるリラックスグッズはあるか、小休憩用にドリンクやおやつのストックはあるかなど、細かいことにも気を配りましょう。自分だけのこだわり空間をつくれば気持ちも高まり、仕事をするのが楽しくなりますよね。
また、小さな子どもがいる環境でリモートワークをする場合には、距離を取ろうとするとさみしさから仕事の邪魔をするようになるかもしれません。仕事のお手伝いをしている気分になれるよう隣でお絵かきやパズルゲームなど静かに過ごせる遊びをさせたり、お昼休憩時に外で一緒に遊んだりするのも、子どもとの良い距離感を保つ方法です。
リモートワークの作業環境を整えるためにも、「集中できる個室もしくは半個室のワークスペースをつくる」「身体に負担がかからない使い勝手の良いデスクやイスを用意する」「ネット環境を改善する」など、仕事スタイルや自宅に合った環境づくりをすると、モチベーションの低下を防ぎストレスを軽減します。
日光を浴びる
自宅で仕事をしていると、朝から夜まで家の中に閉じこもっていて、「しばらく太陽の光を浴びていない」という事態に陥ります。また、リモートワークではオフィスへの通勤時間がなくなるので、「就業時間ぎりぎりまで寝てしまう」「仕事モードが切り替えにくく夜遅くまで起きている」などして、生活リズムを崩す人がいます。
朝、日光を浴びると体内時計が整うので、生活リズムへの悪影響を押さえられます。また、日光浴にはストレス解消や集中力アップなど、気持ちが前向きになる効果が期待されます。この効果は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンによるものです。セロトニンは1日15分~30分程度の日光浴により体内で生成され、睡眠の質を高める効果があるので、疲労回復にもつながります。休憩時間に日光を浴びながら散歩をすれば、運動不足の解消にもなり、リフレッシュできるでしょう。
リモートワークで、「疲れを感じやすい」「仕事へのやる気が出ない」などの悩みが生じた場合には、日光が当たる場所で仕事をしたり、ベランダや庭に出て太陽を浴びたりしてから仕事を始めてはいかがでしょうか。
コミュニケーションを多く取る
リモートワークの業務内容によっては、1日誰とも話さない日があるかもしれません。リモートワークだからこそ、人とのコミュニケーションを多く取る意識が大切です。ストレスの軽減につながるコミュニケーションを取るには、チャットツールの積極的な活用やWeb会議でカメラをONにして顔を見ながら会話をするなどの方法があります。
「今日の天気は……」「こんなニュースがあって」と、チャットや電話で何気ない会話をするだけでもストレス解消につながります。日々、始業・終業時に上司や同僚へあいさつをしたり、仕事の進捗状況を定期的に報告したり、こまめにコミュニケーションを取ると、「誰かとつながっている」安心感が生まれます。業務以外のコミュニケーションを取るために、仕事終わりのオンライン飲み会やオフラインでの飲み会を企画するのもよいでしょう。リモートワークでの孤独感を解消するには、オフィスへの出社時よりも意識して、心の通うコミュニケーションを取るようにしましょう。
身だしなみに気を付ける
オフィスに出社する際には、髪型や服装を整えることで気持ちを仕事モードに切り替えていた人も多いでしょう。リモートワークでは、誰にも会わずに仕事ができる反面、服装や髪型など、身だしなみが適当になる人も増えます。なかには1日中、リラックスできる部屋着やパジャマのままという人もいるのではないでしょうか。「自宅にいるのにわざわざスーツやフォーマルな格好をしたくない」という気持ちもあるでしょう。
しかし、リモートワークでもきちんと身だしなみを整えて仕事に取り組むことが大切です。服装や髪形を整えると気持ちが引き締まり、仕事に取り組む心構えができますよ。また、急なWeb会議の実施にも焦らず対応できるのも良い点です。仕事とプライベートのオンオフをしっかりと切り替えるためにも、リモートワークでは身だしなみに気をつけましょう。
まとめ
自宅で仕事をするリモートワークは、仕事のスタイルだけではなく、家庭のスタイルも変えてしまいます。リモートワークによる環境の変化でストレスを感じてメンタル不調になれば、仕事だけではなく私生活にも悪影響を及ぼしてしまいます。そうならないためにも、ストレスを溜め込まないための対策が必要です。
リモートワークでストレスを感じる原因に、コミュニケーション不足や仕事の成果が見えづらいこと、自宅で仕事をする働き方特有の問題などが挙げられます。最初は1人で誰にも邪魔されずに作業ができて「気楽だ」と感じても、時間がたつにつれ、メリットがデメリットに変わってしまうこともあるでしょう。
リモートワークのストレスを溜めないためには、上司や同僚と密なコミュニケーションを取ることをおすすめします。日光を浴びたり、身だしなみに気を付けたりして、仕事とプライベートのオンオフを切り替えることも有効です。もし、すでに何か不調を感じている場合は一人で抱え込まず、上司や同僚、家族、産業カウンセラーなどに相談して、メンタルヘルスの対策を早急に検討しましょう。