リモートワークは仕事をしていなくてもバレない?企業側が取るべき対策

働く人にとって「通勤の負担がない」「子育てとの両立がしやすい」などメリットが豊富なリモートワーク。しかし雇用する側は、リモートワークによって新たな課題を抱えることになります。

それは、リモートワーク中の従業員の勤怠管理が難しいことです。上司の目が届かない場所で作業している場合、従業員が実際は仕事以外のことをしていても、それに気づくことができません。企業はこの問題にどのように対処すればよいのでしょうか。今回はリモートワークで従業員が怠けないようにするため、企業が取るべき対策について解説します。

リモートワーク(在宅勤務)はサボる人が多い?

リモートワーク(在宅勤務)はサボる人が多い?

実際のところ従業員は、リモートワーク中しっかり業務に専念しているのでしょうか。キャリアや働き方の調査を行うJob総研が実施した「2023年リモートマネジメント調査」の結果によると、程度の差はあるものの働く人の6割以上が「テレワーク中に仕事をサボった経験がある」と答えています。やはり自由度が高すぎる環境では、一定数の人が仕事に集中できないという問題が生じるようです。

しかし、リモートワーク下ですべての人が仕事を怠けるわけではありません。目標達成への意欲や、自己管理能力が高い人は、自由な環境でも真面目に業務に取り組んでいます。そして企業に求められるのは、リモートワークに適したマネジメントによって、従業員からこれらの能力を引き出すことなのです。

リモートワークで仕事していない従業員をなくすために企業ができる対策

リモートワークで仕事していない従業員を企業が防止する方法

それではリモートワーク下で従業員が仕事を怠けることを防止するため、企業が取り組むべき対策を具体的に見ていきましょう。おすすめは次の5つです。

  1. ジョブ型雇用を導入する
  2. 定量評価を導入する
  3. 空間共有を意識する
  4. 定期的な報告義務を設ける
  5. フレックスタイム制の導入を検討する

それぞれ詳しく解説します。

 

1.ジョブ型雇用を導入する

リモートワークで従業員が働かないことを防止するには、各自の業務範囲と責任が明確になったジョブ型雇用の導入がおすすめです。そもそも、なぜリモートワーク下で仕事を怠ける従業員が出てくるかというと、国内企業の多くは各自の業務範囲と責任が不明確なメンバーシップ型雇用だからです。

あえて個人の業務範囲を限定しないことで「チームワークで仕事する」という意識を持たせる狙いがありますが、互いの状況が見えないリモートワークでは「他の誰かがやるだろう」という無責任さにつながるリスクもあります。結果として怠ける従業員が出てくるのです。

ジョブ型雇用であれば、自分がやるべき業務が明確になっていて、その結果に対する責任も問われます。人が見ていようといまいと定められた仕事を終わらせるために、計画的に業務に取り組むようになるでしょう。

 

2.定量評価を導入する

従業員が自発的に業務に専念するよう促すには、定量評価への切り替えが必要かもしれません。定量評価とは、売上や件数など数値化できるもので従業員の組織への貢献度を評価する方法です。定量評価制では明確な結果を出さなくては良い評価が得られないため、従業員は管理されずとも、目標に対して自ら行動を起こすようになります。

定量評価に対して定性評価では、仕事に取り組む姿勢など数値化できないものを評価します。しかし、リモートワークでは働く様子が周囲に見えないため、定性評価は容易ではありません。結果として、上司が受ける不確かな印象に評価が左右されることに。それがチーム内の不満や不公平感の種となり、ますますモチベーションが下がる要因となります。定性評価を重視してきた企業がリモートワークによって生産性の低下を感じた場合、定量評価制の導入も検討してみましょう。

 

3.空間共有を意識する

リモートワークでも、チームメンバー同士で空間を共有している意識を持つことはできます。Webカメラを使用すれば、互いの働く様子が見えてオフィスで一緒にいるときに近い感覚になるでしょう。

現在は手軽に使えるWeb会議システムがあり、Webカメラをつないだままで、各々自分の業務に取り組めます。打ち合わせのときなどは、画面上で資料を共有しながら顔を見て話すこともでき、対面と同じようなコミュニケーションが可能です。

Web会議システムでつながっていれば、自宅で1人で働いている意識は薄らいでいきます。同じ空間にいる感覚のなかなら自然と人の目を意識し、たとえ自宅であっても仕事を怠けることができないでしょう。

 

4.定期的な報告義務を設ける

リモートワーク時の勤怠管理の手段として、定期的な報告を義務付ける方法があります。朝はその日1日取り組む業務と目標を報告し、夕方は結果を報告。毎日これを繰り返せば、仕事の様子が見えないリモートワークでも、従業員の目標に対して取り組む姿勢が見られます。

また定期報告を義務づければ、リモートワークで滞りがちなコミュニケーション、情報共有の機会を確保できるでしょう。上司は部下に適切な指導ができ、部下は必要なサポートが受けられます。オフィスで働いているのと同じように業務を管理することで、従業員の怠けを防止できるでしょう。

 

5.フレックスタイム制の導入を検討する

リモートワークと好相性なのが、フレックスタイム制です。フレックスタイム制は、従業員が自分で始業時間と終業時間を決めることができます。

もし従業員がリモートワーク中にプライベートな用事をしてしまうなら、フレックスタイム制の導入も一つの選択肢です。従業員自身にいつまでにプライベートな用事を済ませて、いつから業務に取り組むのかを選ばせればよいでしょう。例えば、朝は子どもの世話をして保育園に送り出してから家事をしたい場合、仕事はそのあとに始めることになります。

フレックスタイム制を導入するなら、1日のうちに数時間のコアタイムを設けましょう。コアタイムは、すべての従業員が業務に従事する時間のことです。必要な打ち合わせや連絡はコアタイムにすれば、全員の始業時間・終業時間がバラバラでも業務を滞りなく進めることができます。

リモートワーク(在宅勤務)に向いている人の特徴

リモートワーク(在宅勤務)に向いている人の特徴

最後にリモートワークに向いている人の特徴を紹介します。リモートワークを前提とした採用活動などをする際に、ぜひ参考にしてください。リモートワークで成果を挙げやすいのは、主に以下の3つのタイプの人です。

  • 自己管理(セルフマネジメント)ができる人
  • オンとオフの切替ができる人
  • 定期的な報告ができる人

それぞれ詳しく解説します。

 

自己管理(セルフマネジメント)ができる人

リモートワークで必須となるのが、自己管理の能力です。リモートワークでは上司に管理されなくても、自ら目標やスケジュールを考え、業務の進捗を管理する力が求められます。リモートワークのように自由度の高い環境では、個々の自己管理能力が生産性を大きく左右するのです。

自己管理能力が高い人は「目標を達成する」という意識が働き、上司や同僚の目がなくても仕事を怠けることはありません。むしろ周囲から邪魔されることなく作業に集中できるので、リモートワークで今まで以上に大きな成果を挙げられるでしょう。

 

オンとオフの切り替えができる人

オンとオフの切り替えが上手な人も、リモートワークに適しています。リモートワークでは、どうしても仕事の時間とプライベートの時間の境目が曖昧になりがちです。結果として長めに休憩してしまったり、逆にオーバーワークで疲労が溜まったりすると、生産性が落ちてしまいます。

オンとオフの切り替えができる人は、自分の集中力が高まる時間帯にはしっかりと業務に打ち込みます。また反対に、家の中が騒がしいなど集中できない時間は、きっぱりと気持ちを切り替えて休憩するなど、効率的に時間を使えるのが特徴です。このようなタイプの人は、リモートワークのように自由度の高い環境でより良いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

 

定期的な報告ができる人

リモートワークでは、どれだけ丁寧なコミュニケーションが取れるかが鍵となります。特に自分からこまめに報告できる人は、リモートワークでも業務をスムーズに進められるでしょう。

リモートワーク下だと、上司は部下の仕事ぶりや、取り組んでいる業務の現状がよく見えないという悩みを抱えています。現状が把握できないので、適切なマネジメントもできません。それをよく理解し、定期的な報告で自身の状況を正確に伝えられる人は、上司から正しいフィードバックや評価を受けやすくなるでしょう。

互いの状況が目に見えないリモートワークでは、自分の努力で仕事の透明性や信頼を高めなくてはなりません。その重要性を理解し、積極的に報告・連絡・相談ができる人であればリモートワークでも成長が十分に望めるでしょう。

まとめ

組織内でリモートワークが普及すると、企業と従業員間の信頼関係が問われることになります。「従業員は自宅ではほとんど仕事をしていないのではないか」「上司は自分を信用しておらず低い評価をつけているのではないか」と疑いの心を持ってしまうと、社内の雰囲気も悪化し、やがては生産力にも影響を及ぼすでしょう。

そのような事態に陥らないためには、しっかりとしたルールづくりが大切です。ジョブ型雇用や定量評価制を導入すれば、従業員の勤怠の監視に躍起になる必要もありません。あるいはオフィスと同じように空間を共有したり、コミュニケーションを活発にしたりすることで、リモートワークでも互いの仕事を可視化できます。