リモートワークでも労災は認められる?認められるケースと要件を解説

勤務中の怪我や、業務に起因する病気に対して支払われる労災の保険給付。万が一の治療費を補償してくれる大切な制度です。

働き方が多様化する現代、労災に関して一つ気になるのが「自宅などでリモートワークしていた場合も労災は認定されるのか」ということではないでしょうか。労災は「職場での怪我に対して支払われるもの」というイメージが強いため、リモートワーク中の怪我や病気については、始めから申請をあきらめている人もいるかもしれません。今回はリモートワーク中の怪我や病気に対して労災が認められる要件、具体的な事例などを紹介します。

リモートワークでも労災は認められる?

結論から言うと、リモートワークでもさまざまなケースで労災は認められます。労災が認められるとは、具体的にいうと「労働者災害補償保険法」に基づいて、業務上の怪我や病気、あるいは死亡が保険給付の対象になるということです。

たとえリモートワークだったとしても、企業からの指示に基づいて業務を遂行していることに変わりはありません。職場で怪我した場合と同様に、リモートワーク中に自宅で何らかの負傷を負った場合も、要件によっては労災が認められるのです。

リモートワークで労災が認められるケース

リモートワークでも労災は認められる?

リモートワークが続くと、運動不足になって腰痛に見舞われたりなど健康上に弊害を生じることがあります。このような場合は国が定める「腰痛の労災認定」の要件を満たせば、労災が認められるでしょう。

しかし、リモートワーク中にはもっとさまざまな状況で、突発的な怪我をする可能性があります。例えばリモートワーク中にトイレへ行った際、廊下で転倒して怪我をした場合はどうでしょうか。

トイレに行く行為自体は業務の一環ではありませんが、業務中にも当然起こり得る生理現象のため、業務に関連のないプライベートな行為とはみなされません。そのためこのケースでも労災が認められる可能性が高いでしょう。

さらに自宅でリモートワークしているとき、子供達が近くでテレビゲームをしていて、そのコントローラーが誤ってこちらに飛んできて怪我をした場合はどうでしょうか。

このケースは認定が難しそうに思われるかもしれませんが、実は労災として認められる可能性があります。企業が従業員に在宅勤務を認めている以上、近くで子どもが遊ぶ状況も当然想定できます。企業に認められた作業環境の結果として負った怪我のため、労災保険の対象となり得るのです。

リモートワーク中にはオフィスで働いているときには思いもしなかった理由で怪我する可能性があります。それらすべてを労災が認められるための要件に照らし合わせて公正に審査し、該当すると判断されたものが労災保険の対象になります。

リモートワークで労災が認められる要件

リモートワークで労災が認められる要件

それではリモートワークで労災が認められるための要件とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。判断は以下の2つがポイントになります。

  • 業務遂行性
  • 業務起因性

それぞれ詳しく解説します。

 

業務遂行性

業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づき事業主の指揮命令の下にあることを指します。例えばリモートワークとして自宅の一室で過ごしていても、事業主に指示された業務に取り組んでいるときに発生した怪我であれば、労災として認められるということです。

反対に、同じように仕事机に向かっていたとしても、業務に関係ないプライベートな用事に取り組んでいるときに発生した怪我は労災にあたりません。業務遂行性で問題になるのは、働く場所ではなく「勤務中であったかどうか」という点になります。

 

業務起因性

労災認定のもう一つの要件となるのは業務起因性です。業務起因性とは、その怪我や病気と業務遂行のあいだに相当の因果関係があることを指します。

業務起因性で注意すべきなのは「その業務をしていたから怪我した」という事実関係だけでは不十分なことです。「その業務をしていれば社会通念に照らして、その怪我の発生が予想できた」と認められなくてはなりません。

業務起因性は、業務遂行性よりも個々のケースの判断が難しくなります。業務と怪我とのあいだの因果関係を客観的に判断するには、法律の専門家に意見を聞くことも大切です。

リモートワークで発生しやすい労災

リモートワークで発生しやすい労災

次にリモートワークでは具体的にどのような労災が発生するか知っておきましょう。具体的な事例を知れば、対策も立てやすくなります。ここでは労災を2つの種類に分けて解説します。

  • 業務災害
  • 通勤災害

それぞれ詳しく解説します。

 

業務災害

業務災害とは、業務上の事由によって発生した災害を指します。業務を原因とした怪我や病気、死亡は業務災害にあたります。また業務に付随する準備や、後片付けなど行為中の怪我も業務災害の対象です。

リモートワーク時の業務災害の例として「業務に必要な書類を高い所から取ろうとして、足を滑らせて怪我をした」「業務上必要な手紙をポストに出しに行く途中で交通事故に遭った」などが挙げられます。これらの災害には業務遂行性・業務起因性があり、労災として認められる可能性が高いでしょう。

しかしリモートワークでは仕事とプライベートの境界が曖昧であり、怪我が発生したときに第三者も側にいないため、本当に業務中の怪我であるのかどうかを立証するのが難しい問題があります。「本当は私用で外出していたのではないか」「子供の世話や家事をしているときの出来事なのではないか」と疑われる可能性もあるでしょう。この課題の対策については、後ほど詳しく解説します。

 

通勤災害

通勤災害は、業務のために就業場所へ向かう途中で発生した災害を指します。労働契約に定められた業務の時間内ではありませんが、業務遂行に必要な行為とみなされ労災保険の対象となります。

リモートワークのなかでも、在宅勤務であれば場所の移動を伴わないため、通勤災害が発生する可能性は低いでしょう。しかしシェアオフィスやカフェなどを利用する際、その場所へ向かう途中の災害は労災保険の対象となる可能性があります。また通常がリモートワーク勤務でも、会議などへ参加する必要があって出社したときの通勤時の怪我は、もちろん対象です。

リモートワークで労災のトラブルを防止するためには

リモートワークで労災のトラブルを防止するためには

最後にリモートワークでの労災トラブルを防止するために、従業員と企業がそれぞれ取り組むべき対策を紹介します。ポイントは以下の2つです。

  • 必要事項を明確にする
  • 過重労働対策をする

それぞれ詳しく解説します。

 

必要事項を明確にする

まず従業員側はリモートワークに際して、勤務時間・業務をする場所・勤怠の連絡手段などを、企業側と擦り合わせておかなくてはなりません。

リモートワークでは仕事とプライベートの境界が曖昧になるため、労災認定が難航する傾向にあります。しかしこれらの事項が明確になっていれば、万が一のときにも、勤務中だったのかプライベートな用事に取り組んでいたのかの客観的な判断がしやすくなるでしょう。

勤務時間

リモートワーク中は、就業時間が曖昧になりがちです。まずは「いつから業務を開始して、いつ中抜けし、いつ業務を終えるのか」を明確にしなくてはなりません。

在宅で仕事していると、1日のスケジュールのなかに子供の送り迎えや世話などプライベートな用事を組み込むことも珍しくないでしょう。この場合も自分の判断で勝手に動くのではなく、事前に上司にきっちりと報告しておくことが大切です。

また現在は、リモートワークの従業員の勤怠を管理するための便利なツールも生み出されています。各メンバーの出退勤や中抜けの状況が一目でわかるため、災害が発生したのが勤務中だったことを立証しやすくなるでしょう。

勤務場所

リモートワーク中にどこで業務に取り組むかも上司へ報告し、了解を得ておきましょう。リモートワークでは「自宅で仕事をする」と上司に報告していたものの「今日は子供が家にいて騒がしいからカフェに行こう」といって場所を変更するケースがしばしば見られます。しかし、この場合は企業側から認められている就業場所ではないため、プライベートな用事の最中に怪我をしたと疑われる可能性があります。

就業場所を移動すると、途中で発生した怪我も本来は通勤災害にあたります。これらの労災をスムーズに認定してもらうためにも、勤務する時間だけでなく場所についても事前に報告しておくことが大切です。

連絡

勤務時間や勤務場所を企業にしっかり把握してもらうためには、こまめな連絡・報告・相談が必要です。自由度が高いことがリモートワークの魅力ですが、事業主にきっちりと管理されている状態のほうが労災の認定はスムーズでしょう。

就業状況に関する頻繁なやり取りは、上司にも部下にとっても負担になるかもしれませんが、前述したように現在は勤怠管理のための便利なツールも多く存在します。それらを活用しながら、就業の状況を常に透明に保つことが大切です。

 

過重労働対策をする

企業側は労災を未然に防ぐためにも、リモートワークにおける従業員の過重労働対策をする必要があります。リモートワークは仕事の時間とプライベートの時間の切り替えが難しいために、オフィスで働くときよりも長時間労働になることがあります。長時間の労働で疲労やストレスが蓄積すれば怪我や病気の要因にもなりますし、注意力が低下して労災が発生しやすい状況になることも問題です。

まずは従業員に、リモートワーク時の過重労働の危険性をしっかりとアナウンスしましょう。時間外・休日・深夜の労働は原則禁止、あるいは許可制にして、労働時間の厳格な管理が大切です。また「管理職からの連絡は〇時まで」などのルールを定めて、トップから意識を変えることも効果的でしょう。

まとめ

リモートワーク中に自宅で万が一怪我や病気になったときも、要件を満たせば、労災として認められる可能性があります。間違いなく業務に従事している時間内で、その怪我が業務と相当の因果関係があることが確認できれば、立派に労災保険の対象となるでしょう。

問題はリモートワークでは仕事とプライベートの境界が曖昧になるため、事実関係の確認が難しいことです。万が一のときに労災認定を受けるためには「リモートワークでも業務災害や通勤災害は起こり得るもの」という認識を共有し、企業と従業員とで就業場所や勤務時間、勤怠管理についてのルールを徹底しておきましょう。