メタバースでリモートワークは可能?メリットや特徴を徹底解説
仮想空間で参加者が交流をするメタバース。近年、ビジネスシーンにもメタバースを導入する事例が増えてきました。リモートワークのデメリットを解消するのにも効果的です。今回はリモートワークに導入するメリットや具体的なサービスを紹介します。
インターネット上の仮想空間やサービスを指す「メタバース」。近頃はこうした仕組みを業務に取り入れ、活用する企業も増えてきました。
「そもそもメタバースってなに?」
「業務に適したメタバースを知りたい」
「どのような仕事に取り入れたらメリットがある?」
「リモートワークと相性の良いメタバースのプラットフォームは?」
耳にする機会もあると思いますが、こうした疑問はありませんか?
今回はリモートワークとメタバースの関係に注目し、メリットや特徴、具体的なサービスを紹介します。メタバースを取り入れて、コミュニケーションの向上や業務の効率化を目指したい人は参考にしてください。
メタバースとは
メタバースはインターネット上に構築された仮想空間やサービスを指し、ギリシャ語の「Meta(超越)」と英語の「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。
メタバース空間は、オンライン上でコンピュータグラフィックス(CG)やバーチャルリアリティ(VR)技術を用いてつくられます。
このメタバースの原型といわれるのが、アメリカのサンフランシスコに本社を置く企業、Linden Lab社が2003年に運営を開始したサービス「セカンドライフ(Second Life)」です。
セカンドライフでは仮想空間に自分の分身であるアバターをつくり、アバターを使って交流をします。そのなかで注目されたのが、仮想通貨を用いたデジタル制作物の売買です。
今では非常に画期的な取り組みといえますが、当時は詐欺やトラブルが続出し、サービスに否定的な意見もありました。
またセカンドライフの利用には、高スペックなパソコンが必要だったこともあり、幅広い層に浸透することが難しく、徐々に衰退していったのです。
それから20年。今ではスマートフォンのスペックが上がり、個人向けのVR機器も容易に入手できるようになりました。そのため、メタバースを取り入れる企業や団体も増え、経済や社会の新しいシステムが構築されつつあります。
リモートワークにメタバースを取り入れるメリット
リモートワークのデメリットに、従業員間のコミュニケーションや情報共有がスムーズにできない点が挙げられます。
もちろん、チャットツールを使えば会話は可能ですが、文字だけのやり取りは、気持ちや感情が伝わりづらく、思わぬ食い違いが生まれることも少なくありません。
また、完全リモートワークでオフィスへ出社しない場合、企業として一体感がなく、孤独を感じることもあるでしょう。
メタバースを取り入れることで、こうしたリモートワークのデメリットを解消することができます。
リモートワークでメタバースを使う主なメリットを、以下に挙げます。
- 仮想オフィスがつくれる
- コミュニケーションが活発になる
- 楽しく仕事できる
- リモートワークに緊張感が出る
- チームワークが円滑になる
一つずつ解説します。
1.仮想オフィスがつくれる
オンライン上の仮想空間にオフィスを設けることができます。リモートワークは在宅で行いますが、出社勤務のように始業時間に仮想オフィスへ出社し、そこで同僚と肩を並べて仕事するというイメージです。
例えば、完全リモートではオフィスが不要ですが、従業員が集まる場所として事務所を残す企業も多いかもしれません。しかしオフィスの維持には賃料や管理費、光熱費の基本料金がかかるうえ、時には誰かが出社して郵便物を確認したり点検や管理したりする必要もあります。
そこで活用できるのが、仮想オフィスです。現実世界のオフィスと比べ低コストで運営でき、特別な管理も必要ありません。それでいて、従業員が集まって交流できる場所があるのは大きなメリットです。
また、仮想オフィスはインターネット上にあるため、世界各地から24時間アクセスできます。柔軟な働き方ができるリモートワークが、さらに快適になる便利なサービスといえるでしょう。
2.コミュニケーションが活発になる
もともとメタバースは、利用者の交流をメインとしていたこともあり、コミュニケーションを取るうえでもメリットがあります。
メタバースでは、アバターを通して参加者が対面します。身振りや表情が表現できるサービスもあり、コミュニケーション手段もテキストチャットやビデオ通話などさまざまです。
さらにVR機器を使ったサービスの場合、仮想空間でありながら実際その場にいるような感覚になるため、従業員同士のより活発なコミュニケーションが期待できます。
例えば会話する際、まずは相手に近づき声をかけ、その人が振り返ってから話し始めます。現実世界と変わらない、こうした自然な流れにより、業務を効率化し情報共有もよりスムーズになるでしょう。
3.楽しく仕事できる
メタバースは、コミュニケーションの手段やオンラインゲームから始まったサービスだけあり、楽しく仕事できるのも魅力です。
サービスにより、空間を自由にレイアウトでき、自分好みの仕事部屋をつくることができます。
また仮想空間上で、歩いたり相手に話しかけたりする動作には、ゲームの要素も感じられます。楽しく仕事できるとモチベーションも上がり、業務の生産性につながるなどメリットが期待できるでしょう。
4.リモートワークに緊張感が出る
リモートワークは、1人で業務を行うため緊張感がなくなることがデメリットです。
自宅はリラックスできる環境という点ではメリットですが、緊張感が薄れることで集中力が低下する可能性もあります。
メタバースをリモートワークに導入すると、先述の通り社内で同僚と肩を並べているような感覚になります。自宅にいながら、近くに上司や先輩、同僚の存在を感じることで、適度な緊張感を持って仕事に取り組めるでしょう。
5.チームワークが円滑になる
仮想オフィスをつくることで、部署内やプロジェクトメンバーのチームワークが良くなります。
出社勤務の場合、従業員は基本的に就業中は同じオフィスで過ごします。休み時間には一緒に昼食をとったり、世間話をしたりすることもあるでしょう。
このような日々の行動やコミュニケーションを通して、お互いを知り徐々に関係を深めていくことができるのが出社勤務のメリットです。
しかしリモートワークでは、コミュニケーションの機会が少ないため、関係性も希薄になり、チームワークや団結力が弱くなってしまうこともあります。
仮想オフィスがあれば、業務上のやり取りはもちろん、休み時間にコミュニケーションを取ることも可能です。従業員間でお互いの存在を感じながら、リアルタイムで一緒に仕事している感覚が生まれることで、チームワークも強くなるでしょう。
メタバースでリモートワークをするデメリット
メタバースにはメリットだけでなく、デメリットもあります。
主なデメリットは、以下の通りです。
- 業務に集中できない可能性がある
- 仮想通貨を扱うリスクがある
- 活用できるようになるまでに時間や手間がかかる
- 導入にコストがかかる
- ネットワーク環境やパソコンのスペックに注意する必要がある
1.業務に集中できない可能性がある
仮想空間上では、アバターを操作してコミュニケーションを図ります。
前述の通り、メタバースはゲーム感覚で楽しく使用できるのがメリットですが、その反面、デメリットになるケースも。
例えばコミュニケーションを取るときに、必要以上に操作したり雑談に熱中してしまったりして、業務とプライベートの境界が曖昧になってしまう恐れがあります。周囲を気にせず集中できる環境がリモートワークのメリットでもありますが、メタバースの導入により阻害されてしまう危険があることを理解しておきましょう。
2.仮想通貨を扱うリスクがある
メタバースでは、仮想通貨による商品の売買も可能です。
仮想通貨は手軽で便利ですがリスクも大きいため、利用にあたり良い面と悪い面を抑えておくとよいでしょう
仮想通貨をビジネスで使うメリット | デメリット |
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メタバースの導入で、必ずしも仮想通貨を扱わなければいけないわけではありません。取り扱うかどうか選択できるので、リスクを考慮したうえで、最適なサービスを選ぶようにしましょう。
3.活用できるようになるまでに時間や手間がかかる
ビジネスシーンにメタバースが導入されてから日が浅いため、従業員に知識が浸透していないケースも考えられます。
そうした場合は、メタバースや仮想空間について社内に周知し従業員の理解を深め、使い方を説明したり、マニュアルをつくったりする必要もあるでしょう。
活用までに時間や手間がかかり、実際の業務がおろそかになってしまうこともあるので注意が必要です。
4.導入にコストがかかる
メタバースのサービスは無料ではなく、初期費用や月額料金がかかります。
利用人数や使用する機能により、いくつかのプランが用意されている場合が多いため、導入前に希望や条件を伝え、まずは見積もりを取りましょう。
サービスによっては、VR機器や高いスペックのデジタルデバイスを用意しなくてはならず、企業だけでなく従業員にも負担がかかる可能性もあり気をつけたいところです。
運用にかかる費用を事前に把握したうえで、メタバースのツールやサービスを選ぶようにしましょう。
5.ネットワーク環境やパソコンのスペックに注意する必要がある
メタバースはオンライン上のサービスなので、ネットワーク環境の整備が必須です。
サービスによっては、高スペックのパソコンでなければスムーズに動かないこともあります。特に3Dメタバースオフィスを導入する場合は、注意しましょう。
メタバースでリモートワークをする際に必要なもの
リモートワークにメタバースを導入する場合、主に「メタバース空間(仮想オフィス)」「VR対応のパソコン」「VR対応のゴーグル」の3点が必要になります。それぞれ解説します。
メタバース空間(仮想オフィス)
まずはインターネット上の仮想空間に、メタバースオフィスをつくりましょう。従業員が集い、それぞれが自分のアバターを通じコミュニケーションを図る場所となります。
多くの企業がメタバース空間のサービスを提供しており、機能や内容もさまざまです。職種や業務だけでなく、目的や用途に合ったサービスを選ぶようにしましょう。
VR対応のパソコン
バーチャルリアリティ(VR)を使ったメタバースを導入する際に必要です。
VR対応のパソコンは、通常のパソコンに比べハイスペックで、価格も高くなります。一般にゲームプレイを前提にしたゲーミングパソコンは、高スペックでVRに対応したものが多いでしょう。
また、VRを使うためパソコンを自作したり、部品を注文してBTOメーカーで組み立てたりする方法もあります。
以下にBTOブランドの例を挙げます。
- ツクモ(TSUKUMO)
- ドスパラ
- パソコン工房
- マウスコンピューター(ゲーミングPCブランド名:G-Tune)
- Dell(ゲーミングPCブランド名:Alienware)
- 日本HP(ゲーミングPCブランド名:OMEN)
VR対応のパソコンを購入する場合は、初期費用がかかることを念頭に置いておきましょう。またVRを活用しないメタバースのサービスも多く、その場合はVR対応パソコンを用意する必要はありません。
VR対応のゴーグル
メタバースでVRのサービスを利用する際は、VR対応パソコンだけでなくVR対応のゴーグルも必要です。
メーカー各社からさまざまな商品が販売されており、サービスにより利用するゴーグルが異なるため、選ぶ際は注意しましょう。
メタバースで使用できるVRゴーグルには、以下の2種類があります。
スタンドアローン型
本体のみで使えるタイプです。ケーブルをつなげる必要がなく、自由に動き回れます。
パソコン接続型
パソコンに接続して使うタイプです。スタンドアローン型より画質や音質が良好というメリットがあります。
次の章で具体的なサービスや内容をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
リモートワークにおすすめのメタバース
メタバースのプラットフォームには、さまざまな種類があります。ゲームを中心としたものからビジネスシーンで使えるものまで、機能や内容、料金も異なります。この章ではリモートワークにおすすめなメタバースのプラットフォームやサービスについて解説します。
メタバースオフィス RISA
RISA(リサ)は、株式会社OPSIONが提供するメタバースオフィスです。以前は3Dのバーチャルオフィスを扱っていましたが、2Dへリニューアルし利便性が向上しました。
アバターのモーションを使用して、気軽に楽しくコミュニケーションが図れます。
また操作性もわかりやすいので、バーチャルオフィスを初めて使うユーザーにもおすすめです。
特徴
- インターネットブラウザで利用可能
- オフィスフロアをカスタマイズできる
- 音声通話も可能
- 招待URLを発行し、社内外でイベントが実施できる
- アバターのモーションを使ってコミュニケーションを取れる
- メンバーのステータスを表示できる
料金
プラン | スモール | ベーシック | スタンダード | ビジネス | マネジー |
月額(税抜) | 4,000円 | 10,000円 | 30,000円 | 要相談 | 0円 |
ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
同時接続数 | 5人 | 30人 | 50人 | 無制限 | 無制限 |
フロア数 | 1フロア | 1フロア | 1フロア | 無制限 | 無制限 |
Microsoft Mesh(Mesh for Microsoft Teams)
Microsoft Meshは、Microsoftが2021年11月に発表した仮想空間で、チャットやビデオ会議などMicrosoft Teamsの機能が利用できるサービスです。仮想空間で、現実世界のツールを使用することからMixed Reality(MR/複合現実)の一種になります。Microsoft製品と連携し、業務の効率化が期待できるでしょう。
特徴
- アバターを使ったコミュニケーション
- 3D空間でミーティングができる
- リモートで共同作業ができる
- Microsoft 365と統合できる
- 従業員をリモートで呼び出すことができる
Virbela
アメリカ発祥のバーチャルプラットフォームで、コミュニケーションを重視したサービスを提供するVirbela(バーベラ)。日本では株式会社ガイアリンクによってリリースされ、リモートワークだけでなく教育やイベントなどでも活用されています。
特徴
- VRゴーグルを使わない3D仮想空間
- シンプルなアバターを使った交流
- テキストチャット、音声会話の利用が可能
- リモートワークの他、展示会や講演会などイベントの開催も可能
- 十字キーかマウスで簡単に操作できる
料金
Team Suites:自社オフィスとして利用の場合
最大同時接続数 | 10人 | 20人 | 30人 | 50人 | 80人 | 100人 |
月額(税込) | 22,000円 | 44,000円 | 66,000円 | 110,000円 | 176,000円 | 220,000円 |
オフィス数 | 12 | 12 | 18 | 18 | 36 | 36 |
会議室数 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 |
役員用会議室数 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 2 |
Conference Hall:団体ホール(講演会・イベント向け)の利用
最大同時接続数 | 10人 | 20人 | 30人 | 50人 | 80人 | 100人 |
月額(税込) | 22,000円 | 44,000円 | 66,000円 | 110,000円 | 176,000円 | 220,000円 |
Horizon Workrooms
Horizon Workroomsはメタ・プラットフォームズ(通称Meta)が2021年8月に発表したVR会議ツールです。同社のVRデバイスMeta Quest 2(Oculus Quest 2)を使用して、メタバースのバーチャル会議に参加できます。
実際にその場で会議に参加しているような臨場感を味わえます。
特徴
- Meta Quest 2(Oculus Quest 2)の使用により、ジェスチャーやホワイトボードの書き込みなどが仮想空間上でできる
- Meta Quest 2(Oculus Quest 2)がなくても、会議へ参加可能
- VRユーザーは最大16名、ビデオ通話のユーザーと合わせ最大50名まで会議に参加できる
- 自分のパソコンを仮想空間上に置き、作業ができる
- 立体音響を使用しているため、臨場感がある
料金
無料で利用可能(Meta Quest 2またはOculus Quest 2が必要)
XR CLOUD
monoAI technology株式会社が提供するメタバースプラットフォームで、イベントや講演会、セミナーなどで使用します。双方向で音声通話が可能なため、質疑応答や会議もスムーズに行えるのが特徴です。
1万人以上の同時接続も可能で、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットから参加できるのもメリットです。
特徴
- アバターにより、同じ空間でイベントを楽しめる
- 双方向の音声コミュニケーションができる
- Webブラウザやアプリで参加可能
- VR機器の使用により、さらに仮想空間の世界に没入できる
- カスタム性も高く、会場をつくりこめる
料金
公式ホームページのお問い合わせフォームより見積もり可能
まとめ
メタバースのサービスやツールの活用は、リモートワークのデメリットを解消し、より便利で快適な作業空間をもたらします。
スタートから間もない技術のため、利用料金が高かったり、導入後に問題が発生したりすることもあるかもしれません。しかし、さまざまなサービスから条件に合ったプランを選び、うまく使いこなすことで、業務の効率化や社内のコミュニケーションの充実が期待できます。
記事内ですべて紹介できませんでしたが、メタバースプラットフォームは他にも数多く存在するので、費用や機能面などを含め検討してください。