リモートワークにかかる費用の目安は?清算のポイントも解説
リモートワークにはパソコンや周辺機器、業務ツールなどが必須となり、さまざまな費用がかかります。賃料や通信費、光熱費は、リモートワークならではの出費です。リモートワークで必要なものの選び方や、かかる費用、精算のポイントをまとめました。
リモートワークでは、主に自宅が勤務場所となります。
自宅で作業するにあたり、パソコンやWebカメラといったツールや安定したインターネット回線が必要です。さらに自宅以外で仕事する場合、レンタルスペースの使用料やカフェの飲食代が発生します。
今回はリモートワークで必要なものやかかる費用、精算方法を解説します。
リモートワークに必要なものと費用の目安
リモートワークは、基本的に自分で勤務環境を整えます。企業からパソコンや業務ツールが支給されることもありますが、既に自分が持っているものを使用したり、自分で購入したりする人も多いでしょう。
リモートワークで主に必要なものは、以下があります。
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一つずつ見ていきましょう。
1.パソコン
リモートワークでは、パソコンを使って資料作成したり、データ共有したりします。またチャットツールやWeb会議ツールを用いて、社内外のコミュニケーションを図ることも多いでしょう。いずれの場合も、パソコン作業が中心です。
必要となるパソコンのスペックは、業務内容により異なります。
例えば文章作成と動画編集の業務を比較すると、後者の方が高スペックのパソコンを必要とします。また、どんな作業をするにせよ、社内外との会議や連絡を頻繁に行うなら、高いスペックのパソコンがよいでしょう。
私物のパソコンを使用することはできますが、パソコンによってはスペックが低く、作業に支障が出ることもあります。業務前に、実際に使用するツールやソフトを同時に起動し、動作に問題がないかチェックするとよいですね。
パソコンの種類は大きく分けて、ノート型とデスクトップ型の2種類で、以下のような違いがあります。自宅の決まった場所でのみ作業する場合はデスクトップ型、持ち運ぶ可能性がある場合はノート型を選ぶのがおすすめです。
ノートパソコン | デスクトップパソコン | |
サイズ感 | 軽量で薄いものが多く、省スペース | 大きくて重く、モニターとキーボードが別になっている |
持ち運び | 持ち運びやすい | 持ち運びが難しい |
バッテリー駆動時間 | 一般的に3~10時間程度 | 電源に接続したまま使用するため、制限がない |
拡張性 | 後からアップグレードするのが難し い | 外部デバイスやハードウェアの追加、アップグレードが容易 |
ディスプレイ | 一体型デザインまたは折りたたみ式ディスプレイが多い | 単体のディスプレイを使用するので、大画面で作業しやすい |
価格 | 一般的に高いスペックほど、デスクトップ型より高価 | 一般的に高いスペックほど、同じ性能のノート型より安価 |
パソコンを購入する場合、初期投資としてある程度の費用が必要になります。価格はさまざまですが、スペックが高いほど高額になるため、業務に合わせオーバースペックにならないものを買うとよいでしょう。
以下で、業務内容ごとに必要なパソコンのスペックや価格の一例を紹介します。
書類やメール作成が主な業務の場合
OS | Windows 10 Pro |
CPU(プロセッサ) | Celeron/Corei3/Core i5 |
メインメモリ | 8GB以上 |
ストレージ | 250GB~(HDDまたはSSD) |
人気の価格帯 | ノートパソコン:40,000~70,000円 |
動画編集などクリエイティブな業務の場合
CPU(プロセッサ) | Core i5/Core i7/Ryzen5/Ryzen7 |
メインメモリ | 16GB以上 |
ディスプレイ | Full HD(1920×1080)表示~ |
ストレージ | 250GB~(HDDまたはSSD) |
人気の価格帯 | ノートパソコン:100,000~160,000円 |
パソコンなどデジタルデバイスは、企業により支給、貸与されることもあります。購入前に確認するとよいでしょう。
2.インターネット回線
リモートワークでは必須となる、インターネット回線。データのやり取りやコミュニケーションは、オンライン上で行われるため、セキュリティにも注意が必要です。特に無料Wi-Fiはセキュリティの保証がないため、避けるようにしましょう。
インターネット回線にはさまざまな種類があります。
以下にそれぞれ特徴をまとめたので、選ぶ際の参考にしてください。
固定回線 | モバイル回線 | ||||
光回線 | ケーブルテレビ回線 | ホームルーター | ポケットWi-Fi | スマホのデザリング | |
月額料金 | 3,000~6,000円 | 2,000~5,000円 | 3,000~4,000円 | 3,000~4,000円 | 1,000円前後 |
下り平均速度 | 100~300Mbps | 80~100Mbps | 10~40Mbps | 10~40Mbps | 20Mbpsほど |
通信制限 | なし | なし | なし | なし | スマートフォンの契約プランにより、制限あり |
新契約 | 必要 | 必要 | 必要 | 必要 | 不要 |
工事の有無 | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
持ち運び | できない | できない | できない | できる | できる |
特徴 | 通信が速く、環境が安定しているので、オンラインでのやり取りに向いている | テレビ契約と合わせて契約するため、安価になる | 工事が必要なく、気軽に自宅でインターネットを使える | 機器が持ち運べ、外出先でもインターネットが使用できる | 手持ちのスマートフォンを用いて、インターネットに接続 |
ビデオ会議やデータのやり取りをスムーズに行うため、リモートワークでは光回線が推奨されます。しかし、建物の都合上あるいは光回線の工事ができない地域もあるため、自分の環境や業務内容に合わせて、インターネット回線を選択しましょう。
3.Webカメラ
ビデオ会議では、お互い顔を見ながらやり取りするのがほとんどです。ノートパソコンの場合、Webカメラが内蔵されていることもありますが、内蔵されていなければ、別に用意する必要があります。
ディスプレイなどに挟んで使うクリップ式と、デスク上に立てて使うスタンド式があるので、環境に合わせて使いやすいものを選ぶのがおすすめです。
Webカメラは家電量販店やホームセンター、インターネットで購入できます。価格は1,000〜15,000円と幅広いですが、ある程度安定性があり会議に支障がなければ、高価なものでなくても問題ないでしょう。
Webカメラの主なメーカー
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4.ヘッドセット・マイク・イヤホン
Webカメラと合わせて、ヘッドセットやマイクも準備しましょう。パソコンにマイクが内蔵されている場合は、別途購入する必要はありません。しかし、デスクトップ型や古いノートパソコンは、マイクの確認が必要です。
また、マイクがパソコンに内蔵されていても、イヤホンやヘッドホンは必須です。
Web会議でスピーカーから直接音を出すと、内蔵マイクが音を拾いハウリングを起こすことがあります。ハウリングは他の参加者の音声にも影響を及ぼし、会議の進行を阻害します。イヤホンやヘッドホンの使用が望ましい理由は、そのためです。
マイクを新たに用意する場合は、イヤホンとマイクが一体化したヘッドセットがおすすめです。イヤホンの形によりさまざまな形状があるので、好みに合わせて選ぶとよいですね。
価格帯も幅広く、最低限のヘッドセットであれば1,000円台で購入できます。また、マイクやイヤホン・ヘッドホンの価格もさまざまなので、予算に合わせて購入しましょう。
ヘッドセットの主なメーカー
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スタンドマイクの主なメーカー
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イヤホン・ヘッドホンの主なメーカー
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5.光熱費・通信費
リモートワークは自宅で業務を行います。そのため、これまで日常生活以外で必要としなかった電気代やインターネット料金、水道代などが発生した場合、自腹で料金を払うことになります。
光熱費・通信費として発生する主な例を、以下に挙げました。
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業務にかかった経費は、一般的に企業が負担する必要があります。リモートワークが始まる前や、リモートワークにより光熱費の負担が増えた場合は、企業の規定を確認し相談するとよいでしょう。
また、自宅で業務するからといって、光熱費全額を企業に請求することはできません。プライベートと業務で、施設や設備を共用する場合は、合理的な計算で負担割合を算出します。
6.消耗品
筆記用具や付箋、コピー用紙など、業務に必要な文房具は、テレワーク費として企業が負担するのが基本です。
現物支給も可能ですが、その場合、税法上給与という扱いになり課税対象となるので、注意しましょう。
消耗品については、実費を精算するかテレワーク後に返還することで、非課税対象となります。
7.賃料
企業からリモートワークを指示されても、自宅でできない場合もあります。例えば、小さな子供がいてWeb会議をしたり作業をこなしたりするのが難しいときは、自宅外の落ち着いた個室やレンタルスペースで仕事する必要があるでしょう。
コワーキングスペースやレンタルオフィス、カフェなどで仕事する場合、賃料やレンタル料金、カフェでの飲み物代が発生します。
必要な金額は、場所や時間により異なるため、事前に調査、比較した上で選ぶのがおすすめです。以下におよその金額をまとめたので、参考にしてください。
コワーキングスペース | レンタルオフィス | カフェ | |||
ドロップイン | 月額レンタル | 個室タイプ | ブースタイプ | 場所代としての飲み物代 | |
およその費用 | 1時間300円ほど~ | 月額5,000~30,000円 | 東京の場合、 | 東京の場合、 | 1回400~700円 |
自宅外でリモートワークしたいときは、事前に企業へ理由を説明し、賃料やレンタル料金の負担を話し合っておきましょう。
8.デスク周辺機器
業務にあたり、パソコン以外に多くの機器や道具が必要になります。例えば、以下が挙げられます。
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業務をスムーズに進めるため、周辺機器を揃える必要があります。デスク環境を整えることで、業務がより効率的になるでしょう。
デスク周辺機器やグッズにかかる費用は、人によりさまざまです。私物を使用する場合は、ほとんど費用はかかりませんし、逆にすべて購入する場合は何万円もかかる可能性もあります。
業務を進めながら徐々にそろえていくこともできるので、まずは必要な周辺機器を購入しておけばよいでしょう。
9.業務ツール
リモートワークで、ChatWorkやSlackといったビジネスチャットツールを用いることも多いでしょう。無料プラン内での使用ならよいのですが、場合によっては有料プランが必要になることもあります。また、Officeソフトが自宅のパソコンにインストールされていない場合は、購入する必要があるかもしれません。
業務ツールの月額料金やソフトの購入費が必要になる場合は、企業に相談しましょう。企業全体でビジネスプランに加入する可能性もあるので、相談前に自費で購入する必要はありません。
リモートワークの費用の総額
これまで見た通り、リモートワークにはさまざまな費用がかかります。すでにあるものを利用したり、自分で機器やソフトを買う必要がなかったりするケースも多いのですが、すべて購入した場合おおむね10万円から20万円ほどかかる可能性があります。
費用をできる限り抑えるためにも、必要最低限のものから購入していくとよいでしょう。
リモートワークで削減できる費用
ここまで、リモートワークでかかる費用を説明しましたが、反対に削減できる費用もあります。
この章では、リモートワークで削減できる費用を3点解説します。
1.スーツや化粧品代
リモートワークでは、会議や顧客との打ち合わせなどを除き、私服で仕事する人も多いかもしれません。そのため、これまで出社のために用意していたスーツやオフィスカジュアルを購入する必要がなくなり、被服費が抑えられます。
また同時に、スーツやシャツのクリーニング代も抑えることができるでしょう。
女性の場合、一般的にリモートワークであればメイクの頻度が減るので、化粧品にかかる費用も削減できます。
2.昼食代
昼食代も、リモートワークによって削減できる費用の一つです。
出社勤務の場合、コンビニで購入したり、飲食店でランチしたりする人も多いでしょう。
例えば、1回あたり500~1,000円程度使い、20日出社すると、1ヶ月10,000~20,000円の出費になります。
リモートワークの場合、自炊で簡単に済ませられるため節約が可能です。
また付き合いでランチに行く機会もなく、出費を抑えることができます。
3.飲み会代
出社業務の場合、終業後に食事に行く人もいるのではないでしょうか。また、社内の飲み会や慰労会などで出費がかさむこともあります。
リモートワークの場合、そのような交際費が抑えられます。
昼食代と同様、1回ごとの金額が少なくても、回数を重ねると大きな出費につながるため、節約効果は大きいでしょう。
リモートワークの費用が足りない場合
先ほどリモートワークにかかる費用について触れましたが、業務にあたり費用が足りない場合は、金額の一部または全額補助が可能か、企業に相談しましょう。
またパソコンやディスプレイといった初期費用が高いものは、貸与できるか確認するのをおすすめします。
企業によっては、給与にテレワーク手当が加算されるところもあります。テレワーク手当は、テレワークで発生する費用に充てることが前提なので、活用しましょう。
企業にリモートワーク費用を請求するポイント
リモートワーク費用は、経費として企業に請求できます。どのような形で支給されるかは、企業により異なりますが、リモートワーク手当がない場合は、以下のポイントをふまえて交渉しましょう。
ガイドラインを確認する
まずは就業規則やリモートワークのガイドラインを確認しましょう。企業によっては、リモートワークでかかる費用について明記されていることもあります。例えば、光熱費や通信費の負担割合や請求方法、リモート手当の支給のタイミングなどが書かれています。
リモートワークの経費について、ガイドラインに記載がない場合は、企業の総務課や人事、直属の上司に確認してください。
領収書を取っておく
パソコンや消耗品を購入した際は、領収書をもらいましょう。購入したものを後日精算する場合、領収書の提出が必須です。その際は、購入品の詳細も一緒にメモしておくとよいでしょう。
領収書の宛名や但し書きは企業により決まりがあるので、事前に確認してください。
リモートワーク手当の相場
リモートワーク手当の相場は企業によりさまざまですが、フルリモートの場合で月3,000〜5,000円ほどです。リモートワークと出社勤務が混在している場合は、1日あたり150円程度が相場となります。多くの場合、1ヶ月のリモートワーク日数に応じて、手当が支給されます。
他にも実費として、リモートワークにかかった費用を精算することもあるかもしれません。
いずれの場合も企業により基準が定められているので、ガイドラインを確認しましょう。
リモートワーク費用請求の計算方法
リモートワークにかかる費用負担について、2021年に国税庁から指針が公表されています。
電気代や通信費を請求する際には、こうしたガイドラインに則り、業務に使ったぶんを計算するとスムーズです。
基本的な考え方として、1日24時間のうち起きている時間を16時間、そのうち業務時間を8時間と設定します。つまり起きている時間の1/2が経費になる算出方法です。
ただし、あくまでも参考なので実際の勤務時間に応じて、話し合いましょう。
光熱費
国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 」のなかで、電気使用量の計算例として、以下が記載されています。
従業員が負担した1か月の基本料金や電気使用料 × 業務のために使用した部屋の床面積 × その従業員の1か月の在宅勤務日数 × 1/2 |
また、ガスや水道は使用しても微量な場合が多いため、企業と相談するとよいでしょう。
通信費
国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 」のなかで、通信料の計算例として、以下が記載されています。
従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等 × その従業員の1か月の在宅勤務日数 × 1/2 |
電話料金は、業務で使用した通話料を実費請求するのがよいでしょう。
その他
消耗品や業務ツールにかかる料金などは、光熱費や通信費とは別に実費で精算します。
前述しましたが、請求の際は領収書が必要になるので、業務に必要な物を購入した際は領収書をもらいましょう。
リモートワークの費用を節約する方法
リモートワークの費用を節約する主な方法は、以下の通りです。
- 図書館などパブリックスペースを利用し、光熱費を抑える
- パソコンやデバイスはこまめに電源を切り、電気を使いすぎない
- 周辺機器を購入する場合、業務に支障のない最低限のものを選ぶ
- Web会議システムやメッセージアプリを使用し、電話代を節約
- 業務ツールはできる限り無料のものを活用
- 昼食は自炊して、ランチ代を抑える
- 企業と相談し、業務に必要な物品を貸与、支給してもらう
- 経費として業務でかかった料金を請求する
リモートワークの費用を抑えることが難しい場合は、企業と相談しリモートワーク手当支給や、経費の負担を交渉しましょう。
リモートワーク費用が清算してもらえない場合
業務で発生した費用は、企業側の負担となるのが原則です。
しかしリモートワークは、プライベートと仕事の境が曖昧なこともあり、費用が精算してもらえないことも考えられます。
リモートワークで発生した経費が精算されない場合は、確定申告による「特定支出控除」を考えましょう。
テレワークでかかる経費は勤務必要経費に該当すると考えられます。
特定支出控除を適用すると、給与所得から収入に応じた控除が受けられます。
確定申告にて特定支出控除を適用する場合は、勤務先の証明書や費用の明細、商品やサービスの領収書が必要です。
あらかじめ、企業には特定支出控除の希望を伝え、領収書も大切に保管しておきましょう。
まとめ
リモートワークにはさまざまな費用がかかります。これまで出社業務をしていた人にとって、こんなにお金がかかるのかと驚くことも多いでしょう。
しかし、業務遂行にあたり必要なものは、企業に経費負担をお願いできます。
また、経費の精算が難しい場合でも、特定支出控除を適用できる可能性があります。
どちらの場合も、リモートワーク開始前に企業へ相談したり、就業規則を確認したりすることが必要です。
リモートワークにかかる費用の正しい知識を得て、安心して業務ができるとよいですね。